「マセラティ」長距離ドライブでわかった実力

「クアトロポルテ」の持つドイツ系にない個性

乗り心地はというと、ドイツ系とはまるで異なっている。ドイツ系に限らず、最近の高級車の乗り心地は“柔らかめ”が多く、肉で喩えるなら程よくサシの入った和牛といった印象が強い。その点、クアトロポルテは味の濃い赤身だ。キアナ牛のビステッカ・フィオレンティーナを思いださせる。端的に言って、筋肉質な乗り心地で、ソリッドかつダイレクトだ。

ドイツ系の最新モデルじゃ、そうはいかない

人によっては硬い、と思うことだろう。実際、高速道路をクルージングしていても、生真面目に路面のコンディションをドライバーに伝えてくるから、ちょろちょろと動くという印象を抱くかもしれない。Sクラスのように、どっしりと構えて走るタイプには、そういうことはない。

それにシートが薄めだ。これもまた、筋肉質なクルマに感じさせる要素だ。クアトロポルテは、というよりもマセラティのクルマ造りは、徹頭徹尾、アスリート系なのだった。

だからと言って、ロングドライブで疲れやすいかというと、そんなことはない。軽やかなドライブフィールを知らず知らずのうちに楽しんでいる自分がいたりするから、片道500km弱のドライブもあっという間にこなす。京都までが精神的に短くなる。これはとっても有り難い。

途中でさほど休憩を取ることもなく、京都へと辿り着く。さすがに、街中の駐車には気を遣う。京都のパーキングスペースは町家の間口と同様、狭いところが多い。諦めてしまうこともしばしばで、できるだけ新しいホテルや空いている駐車場を探すほかない。そういう意味では、他のフラッグシップ・サルーンと同様に、混み合った街中を気安く乗れるクルマではないが、祇園あたりを流してみて、ハッと驚くことがあった。

古い町並みに、とても似合うのだ。ドイツ系の最新モデルじゃ、そうはいかないと思う。

格子戸の町家が並ぶ通りや、神社仏閣の門前町、美しい石垣や土塀、生け垣の道などに、とても映える。クルマのデザインが浮いているのではなく、かといって調和しているわけでもなく、何かこう、お互いが高いレベルでデザインの果たし合いをしているようで、停めて見ているだけで気分が上向く。当然、その感覚はコクピットに戻ってクルマを転がしはじめても続いてくれる。つまり、ゆったりと京の街中を流していて、これほど気分のいいセダンはそうそうない。

おそらく。それは歴史と伝統に裏打ちされた“造りの良さ”から来るものなのだろうと思った。

【今回のテストカー】
マセラティ クアトロポルテ|Maserati Quattroporte
長距離ドライブの快適性 ★★★★☆
京都の街中使い勝手 ★★★☆☆
ラグジュアリィさ ★★★★☆
コストパフォーマンス ★★★☆☆
うらやましがられ度 ★★★☆☆

(文:西川淳)

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