ロハコで日用品の「パケ買い」が続出のワケ 「リセッシュ」「ビオレ」など定番品が激変
アスクルの執行役員でチーフマーケティングオフィサーの木村美代子さんはそう話す。発想の原点は、オフィス用品を売ってきた同社の社員が営業先で見かけた光景にあった。パッケージの「消臭」の文字が見えないよう裏返しに置いたり、パッケージをはがして使ったりしている顧客が多かったのだ。日用品は、店頭に並べられる前提でデザインされているため、商品名や機能が一目でわかり、さらに競合品より目立つことが最優先とされてきた。
「でもそれは売る側の論理。買ってもらうためのパッケージと、買った後にお客様が使うシーンで心地よいと感じるパッケージは違うと気づいた」(木村さん)
ネット通販であれば、機能などはサイト上で説明できる。その分、消費者にとって心地よい「暮らしになじむ」デザインを追求できるはず──。
その仮説を実証する場となったのが「LOHACO EC マーケティングラボ」だ。同社が立ち上げ、現在100を超えるメーカーが参加しビッグデータ時代のマーケティングを共同研究している組織だが、このラボ内にECならではのパッケージ開発に取り組むグループができた。
おじさんに左右されず
その一社だった花王。今回のデザインリセッシュのチームを率いた同社の塗谷弘太郎・ホームケア事業グループ長は、実際の商品化は大きなチャレンジだったと振り返る。
「私たちはマスマーケットを対象に、高品質な製品を大量生産・大量販売するのを得意としてきた会社。ターゲットを絞り込んでモノ作りをするのは今回が初めてで、いろいろな社内ルールを打破する必要があった」
塗谷さんらは、意思決定のプロセスから変えた。従来は多数のデザイン案の中からモニター調査で人気があったものを上層部に報告。「最終的にはおじさんたちの意見で決まるし、マスを意識するが故に無難なものになりがちだった」(塗谷さん)が、今回は中井理恵さん(32)ら若手の女性デザイナーを中心とするチームに決定権を委ねた。文字のフォントや大きさ、ロゴに関する制約も一切取り払い、戸惑う生産現場も説得して回った。
「純粋にデザインの力が試されるというワクワク感」(中井さん)は、消臭剤のイメージを打ち破るパッケージに結実した。