「博多天ぷら」は東京でブームを起こせるのか 明太子、鶏肉、さば、ごぼうが具材
「平日の昼間に70人前後、夜に40人程度です。これはまあ予想どおりでした。予想と外れたのが、夜の客層です。2次会利用が多く、客のピークが午後10時ぐらいです。年齢層が高くおカネもあるサラリーマンが多いですね。単品から注文できるのでどちらかと言えば“ちょい飲み”に向くのですが、皆さん意外によく食べるしよく飲む。面倒くさいから“盛り合わせ”で頼むし、1人で熱かんを5~6合という感じが普通です。結果として夜の客単価は予想の2500円に対し、4500~5000円まで上がっています」(長尾氏)
また、福岡の出身者は同郷意識が強いらしく、「博多の店がある」と県民が寄り集まって来る効果もあった。店としては喜ばしい方向に予想外だったようだ。ただ、もともと中食への参入を狙っているため、ランチ営業だけで利益を出せるぐらいにしたいというのが本音だそうだ。
「今は、ランチ営業と夜の営業の、二毛作という手段でやっと利益を出せているわけですね。同じビジネスモデルでたとえば新橋ならいけますが、新宿、渋谷ではどうかということを考えると、単価が予想より変に高いのは、あまり手放しでは喜べないのです」(長尾氏)
では、今後、中食業態を成長させていくために、どのような作戦が考えられるだろうか。まずは同店の夜の営業は今のまま、さまざまな工夫で客を呼び込んでいく。たとえば、焼酎や梅酒を注文した客にはけん玉をしてもらい、成功したらドリンク無料というサービスを行っているのもそのひとつだ。
「面白くて、お客様の側が得をした気分になるゲームは何かな、ということでけん玉を思いつきました。これが大当たりで、皆さん、飲み物の好みより“けん玉をやりたい欲”のほうが勝つんですね。どうも、他人がやってるのを見ると自分もやりたくなるようです」(長尾氏)
同サービスは「世界一周」ができたら飲み放題プレゼントという大出血ぶりだ。さすがに成功例は滅多にないものの、最近は「けん玉チャンピオンのお客様が狙ってこられる」(長尾氏)という予想外の事態が起きているらしい。
「ただ、そうしたお客様は、普段自分の技を披露できる場がなかなかないので、人に見てもらいたい、というモチベーションのほうが強い。飲み放題でも、つつましい量を飲んでいらっしゃいます」(長尾氏)
指標とするのは「てんや」
さて、今後、中食の分野に大々的に参入していくためには、チェーン展開が必須だ。長尾氏がベンチマークとして見ているのが、何とてんや。てんやは1989年に東京八重洲地下街に1号店をオープンして以来、現在は直営店141店舗、フランチャイズ 14店舗、海外7店舗を展開する規模に成長した。天ぷらの業態で、同社に並ぶ存在を目指すため、その第1歩として「立地の特性を狙う」(長尾氏)ことを考えているそうだ。チェーン展開につなげるための最も理想的な立地は、ワーカーと住民がどちらもほどよく存在する街中。そして、フードコートが狙い目だという。
「路面店でランチの天丼を550円で出している。フードコートであればさらに付加価値をつけられます。できればマクドナルドとケンタッキーが並んでいるようなところに出店して“あれ、なんか面白い店があるね”と注目してもらえる、そういう立ち位置を狙っていきたいですね。またオリンピックに向け、天ぷらという代表的な和食を、もっとリーズナブルに海外の方に楽しんでいただけるようにしたい、という思いもあります」(長尾氏)
2016年7月、ダイヤモンドダイニングはレストランやビアガーデン事業を行うゼットンとの資本業務提携を行っている。その影響は「現場にはまだ表れていない」(長尾氏)とのことだが、今後、食材の仕入れや出店など、スケールメリットをはじめとするさまざまなメリットを両社が得られることは考えるまでもない。そうしたことも含めて考えると、今回の新店舗オープンは、ダイヤモンドダイニングとして単に新しいブランドを立ち上げたということにとどまらない、もっと大きな構想の一環として考えられるのかもしれない。
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