中央線快速の車窓に映る「あの山」の名前は? 通勤電車でも「百名山」の眺望を堪能できる

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東京都在住の小学生は学校で昔から(たぶん今も)、郷土の地理歴史として「東京都は都会だけでなく、檜原村という村もあります。標高2000メートルを超える雲取山も東京都にあるんですよ」と教えられてきた。都民にとっては、登ったことはなくても特別な山なのだ。

さらにもうひとつ、百名山が近くにひかえている。大菩薩嶺である。車窓からは真後ろ(上り電車の場合)近くになるのでほとんど見えない。国立駅ホームからも手前の三頭山に隠れてわかりづらい。手前の山、大菩薩嶺の各標高から理論上は上部が少しだけ見えるはずだが、見えたような気がするものの確信が持てない。近くの大菩薩峠には濃霧が発生する場所があり、そこに迷い込むと出てこられないと昔から伝えられてきた。おどろおどろしくもあり、大菩薩という名に敬意を表し、見えたと思える方向に向かって手を合わせることとした。

阿佐ヶ谷駅ホームからの眺望もよい

日野―立川間の多摩川鉄橋から見える富士山(筆者撮影)

中央線沿線では、立川―国立間、国分寺―武蔵小金井間、東小金井―武蔵境間、吉祥寺―西荻窪間などで特にこれらの山々がよく見える(一部見えない山もある)。阿佐ヶ谷駅ホームからも富士山の眺めがいい。山はうすく霞がかかっていると遠くに見え、空気が澄んでいるときなどは驚くほど近くに見えることがある。同じ山でも見え方が全然違う。だから毎日見ていても飽きることがない。

晴れた日は、中央線沿線に住んでいない人も、朝少し早く起きて遠回りになっても国立駅へと向かうのはどうだろう。そこで朝日に浮かぶ富士山を拝んで、武蔵小金井駅始発の電車に乗り座って都心へ向かうのも一興だ。

山名の特定には、国土地理院地形図およびパソコンソフトのカシミール3Dのカシバード機能を使って行った。

内田 宗治 フリーライター、地形散歩ライター

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うちだ むねはる / Muneharu Uchida

主な著書に、『地形と歴史で読み解く 鉄道と街道の深い関係 東京周辺』(実業之日本社)、『外国人が見た日本 「誤解」と「再発見」の観光150年史』(中公新書)、『関東大震災と鉄道』(新潮社)など多数。外国人の日本旅行、地震・津波・洪水と鉄道防災のジャンルでも活動中。

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