物価2%上昇達成なら、実質賃金は目減りする 景気・経済観測(日本)

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次に、「悪い物価上昇」が需給バランス悪化と実質賃金低下のどちらの要因によって引き起こされているのかをみると、いずれの国でも物価上昇局面では需給バランスが改善していることが多いが、物価上昇と実質賃金の上昇が両立していることは少なく、日本、イギリス、ドイツで30%台、アメリカで10%程度しかない。つまり、悪い物価上昇は実質賃金の低下によってもたらされている場合が多い。

名目賃金上昇率を物価上昇局面と物価下落局面に分けてみると、いずれの国でも物価上昇局面では賃金も上昇するが、上昇率は消費者物価よりも低い。逆に、物価下落局面では名目賃金も下落するが、下落率は消費者物価よりも小さい(図表2)。このことは物価上昇局面では実質賃金が低下し、物価下落局面では実質賃金が上昇する傾向があることを意味する。

2%の物価目標に立ちはだかる関門

安倍政権の発足とほぼ同時に底打ちした景気は、当初は期待先行の面が強かったが、ここにきて実体経済の回復基調も鮮明となっている。先行きについても、円安や緊急経済対策による景気押し上げ効果や、消費税率引き上げ前の駆け込み需要などもあり、景気は堅調に推移する可能性が高い。

問題は、消費税率が5%から8%に引き上げられる2014年4月以降も、景気回復基調が維持できるかということである。

ニッセイ基礎研究所では、2013年度中は高成長が続くことにより需給ギャップがいったんプラス圏に浮上するが、2014年度は駆け込み需要の反動減に物価上昇に伴う実質所得低下の影響が加わることから成長率は大きく低下し、需給ギャップは再びマイナスに転じると予想している。

このため、消費者物価の伸びも頭打ちになるとみているが、仮に景気低迷下でも物価上昇率が高まり続けるのであれば、これはまさしく「悪い物価上昇」ということになる。

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