物価2%上昇達成なら、実質賃金は目減りする 景気・経済観測(日本)

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日本銀行は2年間で2%の消費者物価上昇率を達成することを目標としているが、言うまでもなく悪い形での物価上昇は望んでいない。しかし、「よい物価上昇」という形で物価上昇率を持続的に高めていくことが果たして可能なのだろうか。

ここで、1970年以降の40年あまりの四半期データを用いて、日本、アメリカ、イギリス、ドイツで「よい物価上昇」がどのくらいの確率で出現してきたのかを見てみた。

具体的には、消費者物価上昇率が加速した局面において、需給バランスの改善と実質賃金の上昇が同時に起こった場合を「よい物価上昇」、需給バランスの悪化と実質賃金の低下が同時に起こった場合を「悪い物価上昇」、需給バランスが悪化(実質賃金は上昇)、あるいは実質賃金が低下(需給バランスは改善)した場合を「やや悪い物価上昇」として、それぞれの出現確率を求めた。

「よい物価上昇」が起きる確率は低い

結果は図表1のとおりである。特徴としてはまず、「よい物価上昇」の出現確率はいずれの国においてもあまり高くないことが挙げられる。最も低いのはアメリカの7%で、日本、イギリス、ドイツは20%台となっている。また、「悪い物価上昇」の確率はおおむね30%前後だが、すべての国で「よい物価上昇」の確率を上回っている。全体の5割前後を占め、出現確率が最も高いのが物価上昇局面で需給バランスの悪化か実質賃金の低下のいずれかが起こる「やや悪い物価上昇」である。

このように、過去40年以上の実績からみるかぎり、よい形で物価上昇率を持続的に加速させることは、非常に難しい課題であることがわかる。

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