商社独り勝ち批判なんてマスコミが言っているだけ−−丸紅会長 勝俣宣夫

拡大
縮小

--総合商社というビジネスモデルが勝ち組になった、と。

それはそう。今、各国の政府系ファンドが自分の国の将来を考えて、日本の商社と何らかの形で組みたいという話がある。われわれもアブダビ(UAE)で一緒にやっています。世界的にそういう評価をされている。将来の国づくりに関して日本の商社が期待されているわけです。

--丸紅は前期の純益の4割強が資源関連ですね。資源ブームが沈静化したらどうしますか。

成長できますよ。食料を例にとれば、日本市場は人口減で縮小すると言われるけれど、われわれは世界に展開しているので、オーストラリアで作ったものを中国で売ることもある。国内でも、食料はダイエーさんと提携し、イオンさんとも組んだ。ほかに負けない競争力をつけていきます。

--日本国内で、商社独り勝ち批判も出てきました。

そんなことを言うのはマスコミだけ。「商社はいいですね、資源があって」と言われますが、それじゃ批判になっていない。資源は今こそ黒字だけれど、赤字でやめようとしたこともあった。ウチの投資基準でいって、5年前だったらみんな捨てている。好況が今後も続くかどうかもわからない。石油の権益だって投資を回収しないうちになくなってしまうかもしれない。相当のリスクを取ってやってきて、たまたま今がある。

グローバリゼーションであらゆるものが変わった。だからわれわれは、日本の安定供給とか資源の安全保障に対して、食料も含めて調達をきちっとする、という部分で日本に貢献していくつもりです。

--後任に指名した朝田社長は総合商社で初の営業経験がない社長として話題になりました。勝俣さんが考える経営者像とは?

財務出身だとか営業経験がないと発表後に言われて、なるほどそういう見方があるのか、と。今、丸紅の経営会議メンバーは、営業の問題も含めてすべての経営案件を扱っている。経営者として必要なものは、経営会議メンバーを3~4年やっている人ならみんな学んでいる。しかも商社みたいな会社は、一部門の営業を知っていたからって、営業を知っているということにはならない。つまり、営業か営業じゃないかは問題ではない。営業センスを持っているかどうかが大事です。

経営者として大切なのは謙虚さや愚直さ。そして、これからステージが変わって丸紅も攻めができるわけだから、明るく前向きで行動力がある人がいい。であれば、候補者4~5人の中で朝田さんがいちばんいいんじゃないか、と思ってね。

--朝田社長の課題は?

朝田さんにとっての課題というのはありません。誰であれ、丸紅の社長に求められるのは二つです。まず、01年のようなハードランディングに陥らないようにすること。二つ目は、ロッキード事件のような問題を二度と引き起こさないこと。つまりCSR経営の徹底です。会社の信用が崩れるときは、業績がよくてもあっと言う間にマーケットから抹殺される。そこのところだけを意識してもらいたい。私ができなかったというわけではなくて、これは駅伝のリレーのように永遠に続く課題ですから。

それから朝田さんだけでなく経営会議メンバー全員に言っているのは、ビジネス面ではいい人になるなよ、ということ。トップがいちばん重要なのは信念を持つことです。ときには鬼の心が必要になる。

(山崎豪敏(編集長)、山田雄大 =週刊東洋経済)

かつまた・のぶお
1942年生まれ。66年慶應義塾大学卒業、丸紅飯田入社。紙パルプ本部長等歴任。2003年社長、08年4月会長就任。5月日本貿易会会長。

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