70代男3人がハマった「廃カツ横流し」全内幕 「自分の目と鼻と口で判断して売った」

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愛知県稲沢市のダイコー本社(写真:関口 威人)
2016年1月に発覚した「壱番屋」(愛知県一宮市)の冷凍カツなど廃棄食品が横流しされていた事件を覚えているだろうか。全国的には関心も薄れてしまったようだが、関係者3人の裁判は年の瀬のこの1、2カ月で集中的に開かれている。それぞれの公判での供述をつなぎ合わせると、事件の全容が浮かび上がってくる。世間を騒然とさせたあの事件の教訓とは何なのだろうか。(文中敬称略)

 

首謀者である産廃処理業「ダイコー」(愛知県稲沢市)会長の大西一幸(76)は詐欺のほか廃棄物処理法違反、食品衛生法違反で8月までに起訴。大西が廃カツなどを転売した食品卸売業「みのりフーズ」(岐阜県羽島市)の実質経営者だった岡田正男(79)は、詐欺と食品衛生法違反で起訴された。名古屋地裁での裁判は10月下旬に始まり、12月15日には大西に懲役3年執行猶予4年、20日には岡田に懲役2年6月執行猶予3年の判決が言い渡された。

初めは「みやげの菓子」だった

12月上旬の双方の公判によると、2人は少なくとも6年ほど前に知り合い、岡田がボイラーを売るなどの目的で大西の会社をたびたび訪れるようになった。岡田によれば、帰り際に大西から「みやげのようにチョコレートなどの菓子をもらった。初めは私と家族で食べていた」。一方、大西によれば、岡田が会社の敷地内にあるものを「もったいないから」と持ち帰り始めたと言う。

こうして岡田の元に食品が貯まるようになり、冷蔵庫などに保管できなくなったものを知り合いの弁当店に持ち込むと、買ってもらえた。当初、岡田はそれが廃棄物だと思わなかったが、大西の工場に出入りしているうち、「2011年の初めごろには、自然と(廃棄食品だと)分かった」という。「当時は会社が資金的に困っていて、いい小遣い銭になった。子どものころは食べ物に難儀していたから、自分の目と鼻と口で判断して、食べられるものは売った」とも供述した。

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