予算案として取りまとめられた結果、合計して1401億円の抑制が実現した。本連載記事「医療介護ではどの費用項目が削られるのか 17年度予算編成で大詰めの社会保障費抑制」で挙げた項目に沿っていえば、70歳以上高所得者の自己負担額の上限の引き上げ(高額療養費の見直し)で224億円の削減、75歳以上の高齢者に対する保険料軽減の特例廃止(後期高齢者の保険料軽減特例の見直し)で187億円の削減、高額薬剤オプジーボの薬価引き下げで196億円の削減、勤労世代が負担する介護保険料を所得に応じて保険料を負担する「総報酬割」の導入で443億円の削減、介護サービスの自己負担額の上限の引き上げ(高額介護サービス費の見直し)で13億円の削減が、筆者が「実現可能性が高い」か「一部のみ実現か実現しそうだが予断を許さず」と評しており、実現した。
それ以外に、医療で、入院時の光熱⽔費相当額の見直しで17億円の削減、協会けんぽの超過準備⾦分の国庫補助特例減額措置で321億円の削減を加え、これら合計して自然増の抑制は1401億円となった。
社会保障費の伸びを「目安」通りに抑制できたことは高く評価できる。特に、診療報酬改定も介護報酬改定も2017年度にはなく、削減できる大きな項目がないため、この秋口には「目安」の達成は困難ではないかと噂されていた。それだけに、こうした抑制策の実現によって、負担能力に応じた公平な負担、給付の適正化をより徹底する方向に導けたといえる。
経済成長による税収増は前提にできない
歳入面ではどうか。
税収は第2次安倍内閣以降2015年度まで順調に増えていた。だが、2017年度は打って変わって、経済成長の果実としての税収増が見込まれなくなってしまった。
2015年度当初予算の税収は、対前年度当初予算比4兆5240億円増(うち1兆6860億円は消費税の増収)の54兆5250億円、2016年度当初予算の税収は対前年度比3兆0790億円増の57兆6040億円の見込みと、経済成長の勢いを借りて増えていた。
しかし、2016年度は、年度途中でそれが得られないことが確実となったことから、当初の見積もりから1兆7440億円減らし、55兆8600億円とする第3次補正予算を組まざるを得ない状況に追い込まれた。2017年度予算案では、税収は57兆7120億円と、2016年度当初予算と比べ1080億円しか増えない形で予算を組むことを余儀なくされた。
もはや、経済成長による税収増だけを当て込んで財政健全化を進めることは困難であることを、肝に銘じなければならない。
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