「香港独立」議論で得をするのは中国だけだ 介入の口実与えれば中国共産党の思うつぼ

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それなのに独立派の一部は、中国側の猛反発を招くような行動に出ている。2016年9月の香港の立法会議員選挙で当選した2人の若手議員は、就任時に定型どおりの宣誓文を読まなかったのに加えて、「香港は中国にあらず」という横断幕を掲げたり、中国を侮辱するかのような発言を繰り返したりした。

こうした行動はすぐに中国政府の怒りを買った。香港の議員が特別行政区に忠誠を尽くすと宣誓するよう定めた法律に違反するとして、中国当局に裁判を起こされた。その結果、2人の若手議員は裁判所によって宣誓を無効とされ、議員資格も取り消されたのだ。

香港の司法当局は中国当局からの独立性を保証されており、この件について香港独自の対応をすることも可能だった。しかし、中国当局はこの点を無視しただけでなく、香港の住民が議員を選ぶ権利にまで介入してきた。

香港当局はそのほかに、比較的穏健な民主活動家の4人の議員に対しても、就任宣誓が無効として異議を申し立てている。こうした状況にかんがみると、香港の民主主義はかつてなく制限されているといえる。

香港が指導力を失い、中国による介入に悩まされるのを見るのはつらいことだ。このままいけば、香港における中国の権力拡大の動きはさらに加速するだろう。

冷静さを失ってはならない

香港の人々にとって重要なのは、彼らのビジョンが過激主義に流されないことを示し、独自のアイデンティティの美徳を守るために立ち上がることだ。

幸運なことに香港にはそれができる多くの人がいる。特に法律の専門家らは、勇敢なリーダーシップを発揮することができるはずだ。

すでに市民団体らは香港の規則と権利についての一般市民への教育に努めている。その結果、中国が香港の自由を侵害している実情が徐々に知られてきている。一例を挙げれば、中国に批判的な書店関係者5人が中国の捜査当局に拉致された件などである。

香港は今、不安な時代にある。そこで必要なのは大胆な行動ではなく、冷静さと政治的意思である。

週刊東洋経済12月24日号

クリス・パッテン 英オックスフォード大学名誉総長

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Chris Patten

元英国保守党議員で最後の香港総督。欧州委員会外交専門部会委員、英オックスフォード大学総長を歴任。

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