三菱自、株主317人が見届けた「再出発」の日 ついに日産体制始動、三菱自は再建できるか
益子社長は「改革を推進するにも優秀な人材が欠かせない。今の報酬水準は他企業と比べ見劣りし、人材が集まらない」「同業他社や同規模の企業の報酬水準を参考にして額を決めた」と回答した。
結局、この議案は賛成多数で可決されたものの、株主から十分な理解が得られたとは言い難い。
今回の役員報酬増額には高額報酬で知られるゴーン新会長の影響が強いとの見方が自動車業界では一般的だ。ゴーン社長はかねてから日産の株主総会でも「優秀な人材確保には他社と競合できる報酬水準が欠かせない」と主張しており、自らが新会長を務めることになる三菱自にも「ゴーン流」を持ち込んだ格好だ。
ゴーン氏は2015年度に日産から過去最高の10億7100万円という役員報酬を得た。一方、会長兼社長兼CEOを務めるルノーからは725万ユーロ(約8億9000万円)の報酬を得たが、報酬額を巡っては一波乱があった。
三菱自でも高額の報酬を得るのか
ルノーは2015年度が増収増益にもかかわらず、ゴーン氏の報酬には「高額過ぎる」との声が出て、議決権比率で54%の株主が反対した。株主総会後の臨時取締役会は減額をしないことを決めたが、2016年度以降は業績連動分を20%減額することになった。
実際に総会に参加した株主はどのような感想を持ったのか。
東京の70代の男性は「提携を成功させるというゴーンさんのメッセージに希望が持てた。三菱自と日産の技術力が融合すれば、競争力も高まり、三菱自の信頼回復にも繋がる」と提携後の開発面での協業に期待を寄せる。
一方で、15年ほど三菱自株を保有している東京の70代の女性は「役員報酬の増額は時期尚早。業績が回復してからの話」と批判した上で「燃費不正は言語道断。三菱自には日本車メーカーとしてのプライドを持った経営をして欲しい。改革の行方がどうなるかを見守りたい」と話した。
3年ほど三菱自株を保有している東京の72歳男性は「不祥事を繰り返さないようにするにはやはり会社の体質改善が重要。日産やルノーから管理職などの社員が来て、外の風を吹き込めば三菱自も変わるのではないか」と話す。
実際に株主からは「中間管理職の体質が変わらないと三菱自は変わらない」との質問も出た。益子社長は同じ認識を持っていることを認めた上で、「日産、ルノーとの交流が深まり、仕事の仕方を学んでいる。会社の風土を変える大きな力になる」と話し、日産・ルノー連合に加わったメリットを最大限に活かす考えだ。
三菱自は燃費不正に伴う補償が響き、今期最終赤字に沈むが、来期はV字回復させる決意だ。日産との協業で来期は営業利益率の1%改善と営業利益約250億円のシナジー(コスト削減効果)を見込む。
業績の回復は最も分かりやすい提携の効果だが、企業風土のような数値化できない領域での改革をどう実現するか。日産は三菱自の株を10年間は第三者に譲渡しないことを大株主の三菱御三家と合意している。「再生請負人」の異名を持つゴーン氏の本気度が試されることになる。
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