50代の「学習意欲の低下」はどう防ぐべきか 「知能」と「記憶力」は加齢によって低下しない

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そして、「物覚えが悪くなった」と歎いている人たちは、現在学習にそこまでの意欲と時間をかけているのでしょうか。大人になるにつれて記憶力が落ちていると感じるのは、学生の頃のように意欲を持って復習にあたらなくなることも原因の1つかも知れません。

加齢によって、知能も記憶力も低下するわけではないとしても、やはり50歳から勉強を始めるのはハードルが高いと感じる人も多いでしょう。そう感じるのには、確かな理由があります。

その1つが、意欲の低下という問題です。この意欲をどのように高め、それを維持するかが、50歳からの勉強においては最大の課題となるわけです。

一般的に、意欲が低下しがちになるのは50代半ばあたりからだと言われています。その要因は、前頭葉の老化と、男性ホルモンの分泌量の減少の2つ。特に、男性ホルモンの減少は、直接的に意欲の低下に影響します。代表的な男性ホルモンである「テストステロン」は、意欲や気力、攻撃性、好奇心と密接な関係をもつホルモンだからです。

これに加え、感情のコントロール、創造性、怒りや不安の処理をつかさどるとされる前頭葉が老化によって委縮することにより、意欲を維持していくことが難しくなっていくのです。

前頭葉の老化防止には“想定外の出来事”が効く

しかし、「老化だから仕方がない」とあきらめるのはまだ早い。前頭葉の機能を保つ方法は、実はちゃんとあるのです。やり方は至って簡単。その部分を使うことです。足が衰えてきたら足を使う、読書力が衰えてきたら読書をする、というのと同じ発想です。

では、前頭葉を使うにはどういう生活を送ればよいのでしょうか。それは、日々に少しでも「想定外」の出来事が起こるようにすること。株式投資を始める、イベントに参加するなど、何でも良いので、40~50代のころから意識的に行っていくといいでしょう。

逆に、前頭葉を使わない生活とは、同じことを繰り返す生活です。前例や経験に従うだけで、創造性を発揮する機会はありません。会社でのルーティーンワークに慣れてしまうと、どんなに優秀でも、いざ新しいことをやろうと思ったときに前頭葉が働かず、創造性もなければ、意欲も沸いてこない、という状態に陥ります。

そしてもう1つ、50歳からの勉強を妨げる大きな原因があります。それは「動機の欠如」です。子どものころならば、「受験」や「就職」、大人になってからも「結婚」や「出世」など、人生における明確な目標が設定されており、それがそのまま勉強する上での動機づけになりました。

しかし、50歳の場合は、これから何かをしたからと言って「人生が劇的に変わることなどない」と悟ってしまっているのです。そこで、自ら目標を設定し、自分で自分を動機づけしていかなければなりません。

では、何が私たちの目標となり、自分で自分を動機づけできるのでしょうか。私が有名な心理学者やMBAホルダーの人たちと心理ビジネスのシンクタンクをやっていた当時、何が社会人の動機づけになるのかを研究したことがあります。結論として考え出したのは、大きく次の3つです。

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