「テキサス新幹線」実現には3つのハードル リニアと並ぶJR東海の肝入りプロジェクト

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不動産デベロッパーとの提携により、ダラス新駅の用地は事実上確保されている。ダウンタウンとはライトレールで直結させ、新駅周辺は大規模な商業開発のプロジェクトが並行して検討されている

3つのハードルの1点目は、資金調達だ。385キロメートルの新路線、当初3箇所を予定している駅舎と付帯設備、そして車両や電化施設、更には車両基地などのハードウェアに加えて、投資を呼び込むためのコストまで総合すると、プロジェクトしては極めて大規模なものとなる。

キースCEOによれば、総額で100億ドル(日本円で1兆1500億円)から120億ドルという数字を念頭に、その全額を民間資金で調達するという。資本金と有利子負債の組み合わせになるが、最終的には格付けを得てグローバルな金融市場から調達するにしても、核になる安定的な出資者を獲得することは極めて重要だ。2017年はその活動が本格化する。

2点目は、規制緩和である。米国で高速鉄道を運行するにはFRA(連邦鉄道局)の規制をクリアしなくてはならない。だが、米国の場合は、高速鉄道と言っても「在来線や貨物との線路の共有」「踏切や鉄道同士の平面交差」「定時運行意識の低いオペレーション」といった条件を前提に、例えば車両の対衝突強度などには欧州以上に厳格な規制がある。

つまり、今回の「テキサス新幹線」については、規制を緩めて欲しいというよりも、「専用線による高速鉄道」という新しいカテゴリを認識して、そのために新しい基準を作ってもらわなくてはならない。

いくらトランプ政権になって、規制緩和派のイレーヌ・チャオ氏が運輸長官に内定しているといっても、人命に関係する安全基準について、FRAが簡単に認可をするとは考えにくい。この点がクリアできなければ、資金調達も難しいわけで、この点が大きな課題として残っている。

地主による反対運動もネック

反対派対策として経済効果をアピールする「ノボリ」も

3点目は、反対派の存在だ。建設用地の収容にあたって、一部地主を含む反対運動というのがネックになっている。反対の理由はさまざまだが、騒音や振動への懸念というのは意外に少なく、それ以上に「鉄道が通ることで農地が分断される」「通過するだけなので利便性は提供されない一方で不動産価値が下がる」といった印象論からの反対があるのは事実だ。この問題を引きずるようでは資金調達に影響が出かねない。

テキサスの大地を「N700系」が走る、そんな夢のようなプロジェクトがかなり現実味を帯びてきた。だが、まだ越えるべきハードルは高い。こうした3つの課題をクリアして、2018年の着工に漕ぎ着けることができるか、2017年は正に正念場となろう。

(写真はすべて筆者撮影)

冷泉 彰彦 作家

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れいぜい あきひこ

1959年生まれ。東京大学文学部卒。米国在住。『アメリカは本当に「貧困大国」なのか』など著書多数。近著に『「上から目線」の時代』(講談社現代新書)。

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