Web2.0からWhere2.0へとインターネットは進化する
地理情報技術が次のインターネット技術の核になる。そんな勢いを感じさせるイベント「Where 2.0」が5月、シリコンバレーで開催された。主催は、Web 2.0を提唱し一躍、著名になった、オライリー(O'Reilly) 出版社だ。昨年のWhere 2.0では、グーグルがストリートビューを発表、マイクロソフトはVirtual Earthを展示するなど注目を集めた。その昨年より100人多い約900人の参加者が世界中から駆けつけた。
地理情報を活用したサービスに力を入れるグーグルは、グーグルマップ(maps.google.com)上に、ユーザーが作成した写真やビデオ、地図表示の情報等を加えたり、アクセスできるサービスを展示した。都市名や住所から検索も出来るし、リンクを、クリックするとほかの情報へのリンクもできる。また、グーグルは、地理情報システム(GIS)をウェブベースに統合したと発表し、会場を沸かせていた。
グーグルマップ上にある3Dの建物は増えてきており、その仮想空間上の建物の壁に看板広告も将来的には可能など、新たな広告ビジネスとしても有効だ。グーグルマップは、ガイドブックをしのぐ情報量で、これからますますデータが増えていくことが予想される。一方、グーグルストリートビューは発表後、個人の行動が特定できるなどプライバシー侵害が懸念されたことを受け、グーグルマップ技術チームは、顔ぼかし技術を開発し、プライバシー対策に懸命だ。
グーグルアースは、バージョン4.3をベータ版で発表した。ナビゲーションがより簡単になり、拠点の写真や動画など情報量がさらに増えた。加えて、APIが公開されたため、他社のシステムとの連動も進んでいる。
マイクロソフトもバーチャル・アースの機能を強化した。携帯検索と音声検索、アウトルック上の会合予定とバーチャル・アース上の会合場所アクセス情報の連動など、ユーザーに便利な機能が増えている(http://maps.live.com)。
ヴァーチャル・アース部門のシニアディレクター、ヴィンセント・タオ氏は「何百万のエコシステムを作り出す(マッピングによる)地球を、あなた方と共に作り出したい」と、来場した開発者たちに呼びかけた。バーチャル・アースの機能は、ニューヨーク市都市交通局の交通案内サービスに導入されている。
CADシステム大手のオードデスクは、3D技術で立方体の建物の中に入って行ったり、壁の素材を透明にし、配管などがどこにあるかが表示できるシステムを開発した。シカゴでは都市開発計画を、オードデスクの3D技術を使って市民に公表。市民は市庁舎のそのモデルを見て意見を出し、その意見が実際の都市開発に反映されたという。
このほか、Earthscape.comが、iphoneでグーグルアースを利用するデモを展示、Poly9が、FlashベースのFree Earthを発表。クライアント側ではソフトのダウンロードの必要がないのが特徴だ。
ソフトからのビジネスアプローチだけでなく、新しいマップデータを搭載した機器もどんどん登場している。常時ネット接続のナビゲーションシステムでは、位置情報を集約するダッシュ(dash)、携帯電話上で使えるLooptなどが注目を集めていた。
産業界の利益追求的な観点からだけでなく、マッピング技術の人道的な意義も発表された。たとえば、オートデスクのジョフ・ゼイス博士によれば、高層ビルなど建築物の設計で作られた情報を公共で分かち合えば、ニューヨークのワールドトレードセンターでのテロ攻撃によるビル破壊の被害などの際にも、「建物からの災害救出活動で多くの人命が助かるはず」という。残念ながら、多額の費用を使って作られた建物の多くの詳細情報が、企業の倉庫の棚でホコリを被ったままだという。そうした情報を公開し、インターネット上のマッピング技術で建物の配線、ビル、外部への出口情報が分かれば、消防隊員たちが電気回線の切れた真っ暗闇の救出活動中、煙に巻かれて命を失うことが防げるというのだ。
(Ayako Jacobsson =東洋経済オンライン)
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