「青函トンネル」線路保守は、こんなに大変だ 北海道新幹線の安全運行を影で支える

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また、この斜坑に隣接して立坑(計2本)があり、現在は排気・排煙用の風道として機能している。一方、他の斜坑(計4か所)は通常は保守作業等の出入口としてのみ機能する。施設としては簡素だが、念を入れて非常用の備品や食料、非常用トイレ等も準備されている。

白符斜坑は、青函トンネル北海道側入口から約15キロメートル付近に位置する2本目の斜坑。松前郡福島町の国道228号「道の駅横綱の里ふくしま」(同地は元横綱千代の富士の出身地)より約2キロメートル付近の山中からアプローチする。斜坑は約12%の急勾配で、約860段の階段と車路が約530メートルにわたって続く。下りきった地点に広い空間があり、本坑の線路と最奥部でつながり、扉で仕切られている。それより線路側への立ち入りは新幹線特例法の適用を受け、IDカードを交付された者だけが、所持品チェックのうえで初めて許される。入坑時に所持していた物品を、漏れなく持ち帰っているか確認する安全確保上の理由からである。置き忘れたものは永続的に残ってしまうという、長大トンネルの特殊性を反映したものだ。

16人の作業員が連携

三線軌が敷かれた青函トンネルの内部(撮影:村上悠太)

当日の作業は、この斜坑付近で在来線専用レールの締結装置部品を交換するものだった。三線軌区間では、新幹線専用レールのほか新在で共用するレールも新幹線建設時に敷設(交換)されたが、在来線専用レールは以前からの継続使用である。また、在来線専用レールと共用レールの締結装置は、津軽海峡線開業時にさかのぼる約30年前に設置されたものが、これまで使われてきた。今回、この締結装置の一部を交換する。

部品は交換基準に達する恐れが出てきたものから交換するが、青函トンネル内は場所によって環境が多様であるため、老朽化の速度にも違いが現れ、交換周期は全区間一律ではない。そのため、中~長期計画策定にも日々の総合巡視や材料検査等が非常に重要となっている。

作業の手順は、締結装置のボルトを抜き、レール吊上機の滑車とチェーンによりレールを少し浮かせ、隙間に枕を挟んで支持したうえで板ばねやタイプレートを外し、絶縁板を交換するもの。16人の作業員が連携、複数を同時に交換したら、場所を隣に移して同様の作業を行う。予定の交換を終了したら軌間を物差し状の標準ゲージで計測し、規定の精度内であることを確認して作業を完了する。この測定器は、以前の保線データ改竄問題に鑑みて、自動計算と記憶機能を備える新しい装置が使用されていた。

1ブロックあたりの作業時間は20分程度とあっという間ではあったが、この日は取材公開という特殊事情もあり、一晩の施工延長は約10メートルであった。ちなみに一般的な条件であれば一晩に20~30メートルの施工が可能という。ただし、トンネルにアプローチできる入口(斜坑と本坑の接続地点等)から現場が遠い場合は、往復の時間を要するために、一晩に作業可能な延長がやはり10メートル程度と短い場合もある。

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