日本株は自律的に上昇する力を持っていない 日経平均の妥当な株価水準はいくらか

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東京市場において、典型的な「順張り」の投資家は海外投資家で、「逆張り」投資家は個人投資家の(現金勘定)です。「順張り」とは、上昇している時、株を買う。流れに乗る投資家のことを指し、「逆張り」とは、上がったら売り、下がったら買うというように相場の流れに逆らう投資家のことを言います。

今買っている投資家は「厳しい投資家」ではない

過去3年のデータでみる限り、異なった投資行動をする、海外勢と個人(現金)が売り、買いの方向性が一緒になることはそう起こることではありません。月次ベースで両者がともに買い越したことは一度もありません。四半期ベースで見ると、ともに買い越したことは当然ありませんが、ともに売り越したのも下記にあるように今年の7~9月期が初めてのことです。

(四半期ベース・売買差額)   
     海外投資家   個人(現金)
16年1~3 -50,125億円 +11,197億円
  4~6  + 2,717    - 5,620
  7~9  -14,459   - 8,192

月次ベースでみても、昨年でともに売り越したのは6月(2万0403円)と7月(2万0372円)の2カ月のみでともに月中平均が2万円を超えており、高値時でした。今年は5月(1万6612円)・8月(1万6586円)・9月(1万6737円)とともに売り越しています。特に昨年とは違い、1万6000円台後半という低い水準で両者の売り越しが重なっていることは気になるところです。

足元で確実に買い越している投資家はETFを購入する日銀と自社株買いの事業法人です。どちらも身内の投資家であり、厳しい投資基準に基づいて投資する投資家ではありません。株価形成のゆがみが懸念されます。

10月1週目は海外投資家も買いに転じました。しかし、海外勢の中でも長期的な視点で投資する投資家が継続して買い越すようなリズムが戻らない限りは、持続的な株価上昇にはつながらないと思われます。長期投資家が東京市場に戻ってくるには、成長戦略や構造改革の着実な実施が必須だろうと思われます。

荒野 浩 マーケット・アナリスト

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あらの ひろし

あらの ひろし 1971年日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社後、調査部でアナリスト業務に従事。米国勤務を挟み一貫して、日本株の情報・市場分析を行う。1996年に朝日投信委託(現みずほ投信投資顧問)に転籍、調査部長・運用部長を経て、常務取締役投信運用本部長を歴任。 2012年に退職。その後はTV,ラジオ出演などで活動。日本株を中心とした市場分析の経験は約45年に及ぶ。投資Salon「荒野浩のテクニカル・ルームから」は、独立系アナリストのメルマガとして、国内最大規模を誇る。

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