日本株は自律的に上昇する力を持っていない 日経平均の妥当な株価水準はいくらか

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日銀がETF(上場投資信託)購入額の増額を決定して以来、下値は一段と堅くなっております。日経平均の立会時間中の安値の平均は8月が1万6498円で、9月が1万6635円と下値が切りあがっています。1万6500円が下値のメドでしょうか。

ただし、前出のように、下値が固まってしまうと、上値も固まる結果となってしまいます。足元3回の高値は1万7000円前後で止まっています。日経平均の中心レンジは現時点では1万6500~1万7000円と考えてよいと思われます。

大きな政策の枠組み変更が予定になく、ファンダメンタルズの改善も足踏みしている環境下では積極的に株を買い進める材料に欠けるわけで、現時点では株価が大きく下げた後でなければ、株価が上昇する勢いは付きにくいことになります。日銀が下値を支えている状況では閑散・小動きという相場が続くことを前提で考えたいと思います。

「減収・経常減益」では、株価上昇は見込みにくい

株価はEPS(=1株当たり利益)とPER(=株価収益率)の積として求められます。まず予想EPSについて、まず考えたいと思います。9月調査の日銀短観の(大企業・全産業)の収益予想は、売上高・経常利益ともに下方修正となっていました。

下半期の見通しは1ドル107.42円の前提で、前年同期比で0.3%の増収、1.2%の経常増益予想となっています。この下半期の予想をベースにした年度見通しは1.6%の減収、9.2%の経常減益です。為替の前提から考えてもまだ下方修正の懸念があります。株価決定の一つの要素であるEPSが増え、当面の株価上昇に寄与するシナリオはのぞめないことになります。

同様に減収・経常減益の国のPERが拡大することも難しいと思われます。5月中旬にPERの算出基準が今2016年度に変わってから、ほぼ5カ月が経過しています。この間、日経平均株価のEPSは1177~1206円の狭い範囲での推移となっており、足元では下方修正含みです。

英国の国民投票の前後で株価は割安な水準まで売られた局面もありましたが、この5カ月のPERの平均は13.79倍でした。下値が切りあがってきた9月以降では平均で14.12倍となっています。投資環境に大きな変化がなければ、PERでは14.0~14.5倍が中心レンジでしょうか。EPS1180円を前提とすれば、1万6500~1万7100円が一つの目安になります。

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