さらに、では百歩譲って、人口さえ増えればそれが魔法の杖のようにすべてを解決することになるのか、という問題があります。今回の例でいうと、確かに旭川市は人口がどんどん流失している都市ですが、地位的には北海道第2の都市、という位置づけにあります。
もしこの都市が第2位にありながら、そういう意味でのビジネスチャンスがもうなかった・・・となるのであれば、北海道は札幌以外すべて消滅の危機にあるということになりますが、実際にはそんなことはない。つまり、それは百貨店側のある意味「経営ミス」だった点を疑わざるを得ないわけです。
そして柏市、千葉市に至っては東京近郊でむしろ人口が増加している都市ですが、そこで百貨店が閉鎖になる・・・ということは皆様の想像とは違って人口増がすべての問題に対する「魔法の杖」ではないということです。
人口増シナリオで「絵に描いた餅」を主導する役人
地方創生にかかわると必ず、人口流出を止め都会の人を呼び寄せ人口増加に転ずる、というような「絵に描いた餅」を主導しようとする役人が非常に多いことに気が付きます。
しかし、実は地方から人口が流出しているのは世界中どこでも同様で、日本固有の問題ではありませんし、戦後60年間、日本ではありとあらゆる手段を用いても、逆転できなかった現象であります。
新幹線さえ通せば・・・道路があれば・・・もっと便利になれば・・・と言って地方に膨大な投資をしたけれど、便利になればなるほど都市へのアクセスが容易になり、ますます人は都会に惹きつけられ人口流出は止められなかったというのが現実です。
そしていくら人口が増えていても、ビジネスモデルを間違えれば百貨店のように撤退を余儀なくされることは避けられないのです。つまり、人口減が経済状況を悪くしている諸悪の根源ではない。その状況下でも十分にやっている業態は地方にはごまんとあるわけですから、ここでは経営努力不足を指摘しなければなりません。
さらに、百貨店の閉店を書いた新聞記事の中で、匿名で百貨店幹部という方が「不振の背景は大型SCやコンビニに押されたほか、アマゾンジャパンを中心としたネット通販の拡大など「ライフスタイルの変化に十分に対応しきれなかった」(大手百貨店幹部)。とあったので、ちょっとびっくりしてしまったのです。
百貨店の不振は大型SCやコンビニ、ましてやアマゾンに顧客を取られたことが原因だと本当に思っているのだとしたら、やはりこういう感覚の人が経営サイドにいること自体が百貨店の業績不振問題を引き起こしているとしか言いようがありません。そもそもこれらの顧客と百貨店の顧客がかぶっていると本当に思っているんでしょうか。
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