たった1回のTV討論会で大統領は決まらない 日本人が知らなすぎる「米大統領選の真実」

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結果からすると、特訓の効果は十分あった。さすがヒラリーだった。ただトランプは、討論には負けても、重要な基本路線は死守した。ヒラリーが攻撃したトランプの弱点は、都会のリベラルな浮動票には重要だ。でも、ここからニューヨークやシカゴやLAで、ヒラリー票が100万増えても、選挙情勢にはほとんど影響しない。

トランプは当選にとってカギとなるオハイオ・ペンシルバニアなどの雇用問題で前半激しくヒラリーを攻撃した。そこでのヒラリーの加点はなかった。

「勝負はまだ」…2000年、2012年を覚えているか

そうした中、“ヒラリーの勝ち”を好感した株式市場。アメリカの市場は前週末の下げ幅を回復した。ただし討論会で大統領選の勝者が決まるなどというのは、視聴率と、ヒラリーの応援を目論む主要メディアの誇張である。勝敗はまだまだ流動的と考えるべきだろう。その具体例が2000年のアル・ゴア(民主党)とG・W・ブッシュ(共和党)のケースだ。

当時、副大統領だったゴアに比べ、ブッシュは全米では未知の存在だった。初回の討論会、ブッシュには迫力がなかった。どちらかというと緊張でオドオドしていた。当時の主要メディアは今よりは中立的だったが、翌日、ほとんどがゴア勝利と報道した。

ところが、例のリカウント騒動(フロリダ州での投票結果をめぐる大紛争)の末、最終的にブッシュが大統領になると、メディアは自らが下した初回の評価をひっくりかえした。「スムーズではなかったが一所懸命だったブッシュ。頭の良すぎるゴアはブッシュをこばかにした。だから勝てなかった」などと、コロッと変わってしまった。今では後者が定説である。

まあメディアの評価など、こんなものなのだ。そもそもビジネスマンのトランプと、政治家のヒラリーでは、有権者から期待されている要素が違う。そして討論会はあと2回ある。一度負けを経験し、そこから巻き返すことは十分可能である。2012年、初回の討論でロムニーはオバマに勝った。だが2回目、3回目の討論会では評価でオバマに逆転されている。

次ページ2回目、3回目の討論会はトランプに「有利」?
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