ソフトバンクに強敵、巨額買収に暗雲 米スプリントの買収に、米企業が対抗
米国ではネットによる動画配信の台頭で、衛星放送は伸び悩んでいる。ディッシュは以前から、携帯会社を買収して有料放送、動画配信、ネット、電話などをまとめて一括料金で提供できる企業を目指しており、今回の買収提案もその一環だ。
米携帯業界は「2強2弱」。1位のベライゾンと2位のAT&Tが1億以上の契約数を抱え、3位のスプリントは約5500万、4位のTモバイルは約3300万と差が大きい。2強に追いつくには下位の再編しかないといわれる。実際、Tモバイルが7位のメトロPCSの買収を、スプリントが6位のクリアワイヤの完全子会社化を進めている。
ディッシュの買収提案はソフトバンクの案より魅力的?
スプリントから見れば、ディッシュの買収提案はソフトバンクの案より魅力がある、との声が業界内からは出ている。ディッシュはもともと、クリアワイヤ買収に意欲を見せていたためだ。スプリントはすでにクリアワイヤ株式の50%強を保有しており、昨年12月に残りの株式を1株当たり2.97ドル、総額22億ドルで買収すると発表した。一方、ディッシュは今年1月に1株当たり3.30ドルで買収提案している。
外国企業による通信事業買収は連邦通信委員会(FCC)の承認を必要とするため、ソフトバンクとスプリントの最終的な合意は7月となる。その間にクリアワイヤ株をディッシュが買い集める、という危機感がスプリント側にはある。
さらに、米国では総合的な通信サービスで競う時代に突入している。ベライゾン、AT&Tはネット、テレビ、電話をパッケージにしたサービスを提供しているが、携帯は別料金。ディッシュがスプリントとクリアワイヤを買収すれば顧客基盤を拡大できる。携帯もパッケージにしたサービスを展開すれば、上位2社に対抗しうる、との見方がある。
一方、ソフトバンクとディッシュの買収合戦に発展し、ソフトバンクの資金支援が遅れた場合、スプリントには大きなマイナスだ。高速通信LTEの通信網構築にかかる投資負担などでスプリントは赤字に沈んでいる。ブランド力やネットワーク品質で先を行く2強に、LTE投資でさらに水をあけられかねない。買収後、ディッシュが大規模な設備投資の負担に耐えられるのか、疑問符もつく。
ソフトバンクは「これまでに合意している条件で7月1日には買収が完了する見込み」としており、とりあえず静観の構え。FCCの承認は得られるのか、スプリント株主はどちらの提案を支持するのか。ソフトバンクにとって気をもむ状況が続く中、まずは4月30日の同社の決算発表会見に注目が集まる。
(撮影:尾形 文繁)(週刊東洋経済2013年4月27日―5月4日合併号)
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