日本の鉄道「英語アナウンス」は回りくどい? 英国のようにもっとシンプルで問題なし!

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英国以外のヨーロッパ各国では、どのような英語の案内がされているのだろうか。地続きで、多くの国際列車が運行されているヨーロッパでは、自国語以外に近隣諸国の言語と英語の案内は必須で、国際列車に乗務する車掌は、まずマルチリンガルである場合がほとんどだ。スイスのように公用語がいくつもある国の場合は、そのすべての言語を話せる人がほとんどで、もちろん英語は必ず通用する。

では自国語で案内した車内放送は、内容をすべて忠実に英訳して放送しているかというと、必ずしもそういうわけではなかった。英語の案内は、基本的に外国人旅行者へ向けた案内であり、不必要な内容まで英語にして案内する必要もない、ということなのだろう。

私が過去に、何度も笑い話として紹介しているのが、イタリアの高速列車車内での話だ。今から10年以上前、まだ21世紀を迎えたばかりの頃だったと思う。満員の乗客を乗せたローマ行きの列車は、ミラノを出発すると、車内でイタリア語による案内放送が始まり、途中停車駅と到着時刻、車内設備や食堂車の案内などが延々と続いていた。

やがてイタリア語の案内が終わると、「Ladies and Gentlemen」と英語による案内がスタートした。当時、ほかのヨーロッパ諸国を見回しても、国内列車の車内で英語が放送されることは珍しく、イタリアも頑張っているものだと大いに感心したら、「next stop Bologna(次はボローニャ)」だけで終了し、あれだけ放送していた途中停車駅も到着時間も一切案内が無く、あぜんとしたことがあった。

よく、日本人は英語が苦手だ、ということを耳にするが、ヨーロッパでも英語が通じない地域はまだまだ多い。特に地方のローカル線では、地域住民はもちろんのこと、車掌とすらコミュニケーションを取ることが難しいと思っておいたほうが良い。ちなみに現在のイタリアでは、多くの車両に自動放送装置が設置され、英語でもさまざまな案内が行なわれるようになってきた。

特急=Limited Expressは「米語」

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インターシティの名前を有名にした、英国の特急列車インターシティ125はディーゼル機関車が牽引・推進する

急行よりさらに上位の、特別な列車として特別急行、すなわち特急が誕生した。この英訳は、日本国内ではLimited Expressと訳するのが一般的となっているが、世界を見回すと、この表現はアメリカなど、一部の国でしか用いられていないようで、日本で使われているLimited Expressもアメリカから輸入されたものだ。そのアメリカでは、旅客列車が衰退したことで、この言葉も死語のようになっている。

では、多くの旅客列車が走るヨーロッパでは、どのように種別を分けているのか。一口にヨーロッパと言っても、国によって分け方も呼び方も異なっているが、昨今は高速列車が各国の最上位列車になったことから、上から順に高速列車、国内外の在来線特急列車、特急より停車駅の多い急行・快速列車、各駅停車のように分けられ、呼び方も各国で異なる。

高速列車は、愛称がそのまま種別を指すパターンが多く、フランスならTGV、ドイツならICEとなる。在来線を主に走る特急列車の種別で、ヨーロッパで最も一般的なものは、インターシティ(国際列車はユーロシティ)であろう。

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