カネカの付け毛、アフリカで大ヒットのなぜ 女性のおしゃれ心つかみ、最大の稼ぎ頭に

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カネカがアフリカに着目したのは、今から30年以上も前のこと。1980年代前半に営業マンが出張先の米国で、セネガルから来た商人が付け毛を大量に買い付ける姿を見掛けたのがきっかけだった。当初は半信半疑だったが、実際にアフリカを回って一定の需要があることが確認できたため、取り引きのあった海外の頭髪品メーカーと協力し、現地での市場開拓に乗り出した。

とはいえ、当時のアフリカはまだ貧困の時代。値段が高いカネカロンの製品はさっぱり売れなかった。カネカの社員が自ら製品を抱えて小売店回りをしたり、素材の改良を重ねるなど地道な努力を続けたが、それでもなかなか普及が進まない。「もうアフリカには見切りをつけた方がいい」。社内からも撤退を促す声が相次いだ。

ところが、2000年代半ば辺りになると、風向きが大きく変わり、目に見えて販売が伸び始めた。原油や鉱物資源の市況高騰で、アフリカ諸国にも巨額の資源マネーが流入。経済発展で個人の所得水準も上がり、より多くの女性が付け毛でおしゃれを楽しむようになった。それまで高くて買えなかったカネカロン製品にも手が届くようになったのだ。

付け毛需要で合繊が全社利益の3割稼ぐ

「最初の20年間はさっぱり売れず、非常に苦労した。20年かかってやっと0が1になった程度だったが、その後の10年間で需要が一気に10培近くにまで増えた」。カネカの合繊事業を統括する天知秀介取締役は、アフリカ市場の激変ぶりをこう振り返る。

アフリカでは、長さやカール度合いが異なる色々なタイプの付け毛製品が売られている。ちなみに、最近はロング・ヘアスタイルの製品に人気が集まっているという

現地の付け毛需要は右肩上がりで増え続け、今やアフリカは人工頭髪品の世界消費量の約半分を占める最大マーケットだ。カネカのパートナー企業は現地工場を次々に建て、サブサハラ全域で顧客工場数は約30にまで増えた。

そのアフリカ市場への輸出が牽引役となり、カネカの合繊事業は規模、利益とも拡大。昨2015年度の事業売上高は452億円、営業利益に至っては全7事業の中で最大の156億円を計上し、全社利益の3割近くを稼いだほどだ。

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