トランプがついに仕掛ける「仁義なき戦い」 支持率低下を受け、誹謗中傷のプロを参謀に
政治の専門家はトランプ氏による今回の選挙参謀変更を、自殺同然の行為だと考えている。トランプ氏に批判的な保守派であるエリック・エリクソン氏は、トランプ氏が人気を取り戻すにはまったく逆の方向に向かう必要があり、この動きは「完全に常軌を逸している」と批判した。
しかし、この一見意味不明なやり方にも、それなりの考えがあってのことかもしれない。トランプ氏は現時点で既に、大統領選史上最も人気の無い候補だ。クリントン氏はトランプ氏の人格、気性、経験不足および政策に関する無知を、自身の選挙活動の主要なテーマとしてきた。
その上、彼女は11月の選挙を、トランプ氏が大統領として「ふさわしいかふさわしくないか」ということを問う国民投票にしようと試みてきた。トランプ氏が大統領としてふさわしいかふさわしくないかという観点から見れば、トランプ氏の敗北は間違いない。
しかし、クリントン氏は2番目に人気の無い大統領候補であり、大多数の米国人は彼女を信用できないと思っている。トランプ氏は新設した自らの攻撃チームを使って間違いなくクリントン氏の人格、過去のスキャンダルや経歴に選挙戦の焦点を当てようと試みるだろう。彼は演台の上で政策をめぐる討論をすることはできないが、クリントン氏個人、そして彼女の経歴に対して焦土作戦のような攻撃を実施することはできる。
もし、トランプ氏が選挙戦をクリントン氏に関する国民投票にできるなら、彼女の欠点を強調することで特に若年層の投票者の投票率を下げることが可能かもしれない。
誹謗中傷の実績には事欠かず
トランプ陣営のバノン氏とブライトバート・ニュースは、評判を落とすための悪意ある中傷活動をした経験には事欠かない。ここ数週間の例としても、「敵意を抱くイスラム教徒を輸入した」としてオバマ氏を攻撃し、妊娠中絶などを手がける民間非営利団体プランド・ペアレントフッドの女性向け医療サービスをホロコーストになぞらえた。
バノン氏は創設者であるアンドリュー・ブライトバート氏の死後にブライトバートを引き継ぎ、ウェブサイトをトランプ氏支持のための極右プロパガンダ機関に作り替えた。ただ、バノン氏が引き継ぐ前からブライトバート・ニュースは、なりふり構わない手法で、かみつき報道をしてきた。
例をあげると、ブライトバートは草の根運動を行う地域団体の連合組織エイコーンへの潜入報道を仕組んだ。潜入を基にした「ドキュメンタリー」番組は、エイコーンの事務員がクライアントに犯罪の助言をしたように見える作りになっていた。エイコーンは資金難に陥り解散してしまった。
ブライトバートはまた、アフリカ系アメリカ人の農務省官僚で、公民権提唱者でもあるシャーリー・シェロッド氏の発言を編集によって歪曲した動画を制作した。この動画によってシェロッド氏は反白人主義の人種差別主義者だと非難され、動画が虚偽だと判明する前に解雇された。