うずらの卵パックを買ったら、飼ってみよう その道のプロに聞く「生きものの飼いかた」
さらに本書、なんとあの「カマイタチ」と「ツチノコ」の飼いかたまで解説している。著者はいつカマイタチに出会ってもよいように、耐切性の手袋を持ち歩いているそうだ。飼いかたはフェレットを応用。ツチノコの場合はまず毒蛇かどうかを調べ、毒があった場合には地域の役所に問い合わせて指示どおり登録するようにと、じつに具体的。これでもう、いつカマイタチやツチノコに出会っても大丈夫! 本当によかった、この本があって!!
飼うことで培われる生きものへの関心
……と、さんざん本書のメリットを説いてきたものの、じつは私はいま、生きものを飼っていない。生きものに関心がないわけではない。むしろ逆である。いろいろ飼って失敗もして、「やっぱり生きものは、自然のなかにいる姿を見るのがいいな」と思うようになったのだ。
でも、とぼけた顔のヨシノボリがモツゴの稚魚を丸呑みしてしまったり、アゲハチョウの幼虫が糸を吐きながら体を固定して蛹に変化したり、飼っていなければ見られなかった生きものたちの生態は、子ども心に焼き付いた。飼うことで培われた生きものへの満ち満ちた関心は、いまも私の中にある。
とっても実用的な本書だけれど、それぞれの飼い方は、じつは一般の飼育書ほどには詳しく紹介していない。でも、それが本書のスタイル。だって、相手は生きものだもの。マニュアル通りになんてなりっこないんだから! 毎日様子を見て、試行錯誤で世話をして。著者の言うように五感をフル活用して、全力で向き合う覚悟がないのなら、初めから飼わないほうがいい。
生きものを飼うこと自体に賛否もあるだろう。でもいちばん怖いのは――「無関心」、なんじゃないかなあ。いつの間にかカブトムシやメダカが絶滅していたって、寂しくともなんともないなんて、飼ったことがあるならありえないよね。
そういえばあの『星の王子さま』(内藤濯 訳)にも、こんな言葉が出てきたっけ。
いつか「飼う」ことから卒業する日が来ても、生きものたちと真剣に向き合った経験は、小さな隣人たちへの愛着の灯として一生燃え続けるはずなんだから。
※画像提供:大和書房
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