「パーサー」の眼から見た新幹線客の違いは? 指定席か自由席かで異なる購入需要や言動

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カーブの区間では車体の傾きでワゴンが動いてしまうことがあるため、パーサーは気を遣うという(写真:hide0714 / PIXTA)

もっとも、パーサーにとってむしろ気になるのはワゴンの扱いで、静岡、浜松の近辺では車体の傾きによって、ワゴンが動いてしまうこともあり、取り扱いに気を遣うのだという。さらに通路で販売を行う際には、ワゴンを片側に寄せ、乗客が通れるスペースを確保しているというが、それでも荷物を携えている乗客が通りづらいこともあり、皆の気が立ってしまいがちな混雑時には特に細かな気配りが大切であるという。

そんな薊さんも、もちろん初乗務のときは、大変な緊張を強いられ、「すべてのものが灰色に見えて、1号車までたどり着けないと思った」のだとか。そして今は後輩を指導する立場になり、自身の経験と、初めて教えられたことを後輩に伝授しているという。それは「まず笑顔で人と接しろ」ということで、笑顔で人と接し、笑うことでお互いの緊張を取り除く。そうして経験を積んでゆくうちに、少しずつ視野が広がってゆくのだという。

先入観にとらわれないことが大事

そのような仕事の中で、何よりも気を付けていることは?というと、ワゴンの扱いというようなことではなく、「先入観に囚われないこと」であるという。

例えば、乗客から列車の乗り継ぎについて質問を受け、それが自分の熟知しているはずのルートであっても、必ず確認をしてから返事をする。安易な対応をして、間違えた情報を伝えることは、鉄道で働くプロとして許されないことだから、というのがその理由。こういった細やかな心遣いがあるからこそ、新幹線の車内という数多くの乗客と常に接し続けなければならない場所での勤務が続けられるのだろう。

ところで身近な話題を一つ。新幹線の車内で販売されているアイスクリームは、なぜ、あれほど硬いのか?を聞いてみた。

「よくそういう指摘を受けます。乳脂肪分の高いことが、新幹線のアイスクリームの硬さの理由です。ですから、時間をおいて味わって頂くということと、お急ぎになるのであれば、ホットコーヒーを注ぐお客様もいると伺っています」と薊さん。明るい口調で“裏技”を伝授してくれた。

池口 英司 鉄道ライター、カメラマン

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いけぐち・えいじ / Eiji Ikeguchi

1956年東京都生まれ。日本大学藝術学部写真学科卒業後、出版社勤務を経て独立。著書に『国鉄のスピード史―スピードアップがもたらした未来への足跡』(イカロス出版)、『鉄道時計ものがたり―いつの時代も鉄道員の“相棒”』(共著、交通新聞社新書)、『JR旅客6社徹底比較』(河出書房新社)、『さらに残念な鉄道車両たち』(イカロス出版)等。

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