新生・村上ファンド その野望と内情 この先、村上氏はどう出るのか?
200億円の個人マネー
「大将」──。関係者によると、村上氏は身内の間でそう呼ばれている。東京・南青山にある「第2宮忠ビル」の8階、レノが陣取るオフィスの一角にその執務室はあるという。2006年6月のインサイダー事件前後に村上氏は居住地をシンガポールに移したが、毎月のように帰国しては指示を飛ばしているとされる。移住計画とともに村上氏が国内でひそかに進めたのは不動産投資への転換だった。その窓口に仕立て上げるべく、知り合いのつてで入手したのが休眠状態にあったレノだ。
08年10月、村上氏はレノを共同経営体制にするため「覚書」を交わしている。かつて盟友関係にあった野村証券OBの丸木強氏ら主要幹部は村上氏の元を去っていた。新たなパートナーとなったのは、村上ファンドで企画課長だった三浦恵美氏(37)、親しい税理士の赤根豊氏(43)、顧問弁護士的存在の中島章智氏(52)の3人だった。
「約200億円」(銀行関係者)ともされる村上氏の個人資産がレノの資金源とみられる。東京・西麻布の権利関係が複雑なビルの転売に成功したのを手始めに、レノは09年以降、ダイナシティやジョイント・コーポレーションなど倒産した不動産会社のスポンサーに次々と名乗りを上げた。それが昨年夏、やおら株式投資に回帰した。明らかになった投資先はJVCケンウッドやSBIホールディングスなど。ただ、これらはあくまで「純投資」。「もの言う株主」として会社側に要求を突き付けることはしてこなかった。
ところが今回は違う。昨年11月中旬、PGMによって将来的な経営統合を目指したTOB計画が公表されるや、水面下で猛烈にアコーディア株の買い占めを開始。10%超を握る大株主であることを公にした直後の今年1月13日には株主還元の強化を要求する書簡をアコーディア側に送り、前向きな回答を引き出す電撃的な行動に出た。対抗TOBの候補としてオリックスや米ゴールドマン・サックスを意識していたPGMも「レノの登場は寝耳に水」(関係者)。1月17日に締め切られたTOBは応募株数が下限(議決権割合で20%)に満たず不成立に終わるという予期せぬ結果となった。