新生・村上ファンド その野望と内情 この先、村上氏はどう出るのか?

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不動産で多額の損失

この先、村上氏はどう出るのか。実は新生・村上ファンドの内情はそれほど芳しいものではない。

これまで不動産投資はトラブル続きだ。08年夏、新興不動産会社リプラスに約50億円を貸し付けたところ、わずか2カ月後に同社は破産。勝村建設に貸した15億円も焦げ付いた。破綻ゴルフ場を全国で買いあさっている経営者に融通した3億円も回収不能になったが、その人物は暴力団が実質支配したゴルフ場とも一時接点があったような厄介な先だ。

さらにパートナーの離反にも見舞われている。10年12月に前出の赤根氏が関係先の役職を一方的に辞任してしまったのである。その後、赤根氏はレノ株の受け皿会社「フォルティス」の持ち分を高値で買い戻すよう村上氏側に要求。対する村上氏は恐喝まがいの行為だと反発。両者の対立は訴訟にまで発展している。

最高裁で有罪判決が確定した村上氏に対する世間の目も厳しいままだ。前出のジョイント・コーポをめぐっては途中で法律管財人の姿勢が硬化。レノと村上氏との関係を完全に遮断することが求められた。結局、レノは昨年5月にスポンサーの座を外資連合に譲らざるをえなかった。レノは自社株買いで資本関係こそ解消したが、村上氏との関係を切ることなど、できない相談だろう。

「TOB不成立はレノも見込み違いだったのでは……」。PGMの神田有宏社長はそうつぶやく。TOB代理人の証券会社にはレノから何度も探りの電話があったという。それも踏まえると、TOB後の統合交渉で有利な条件を引き出すことが本当の狙いだったのではないかとの推測ができる。PGMの背後には好財務を誇るパチンコメーカー平和が控える。「引き出せるカネはウチらにしかない」(神田社長)というわけだ。

ただ別の見方もある。アコーディアの取引先である緑化会社「泰正」の正木烝司社長は言う。「アコーディアは800億円の売り上げで2割の粗利益率がある。そんないい金融商品なら世界中に投資家がいるよ」。アラビア石油創立者の故山下太郎氏を実父に持ち財界に幅広い人脈を張る正木氏は今回、キーマンと目される一人。村上氏との関係は否定するが、正木氏の見方を援用すれば、レノの役回りはTOBを阻止し、友好的スポンサーへ橋渡しするまでの「用心棒」ということになる。

一昨年5月、村上氏はシンガポールに「CARON」なる新会社を設立、三菱商事に勤めていた実兄の世博氏が永住権を取得して役員に就任した。世博氏は昨年11月に外食チェーン展開の旧レックス・ホールディングス創業者の西山知義氏とともに現地で会社を設立してもいる。シンガポールで新たな体制固めを図っているようにも見える村上氏。追い込まれているのか、計算ずくなのか、その心中はいまだ定かでない。

(ジャーナリスト:高橋篤史 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済2013年2月9日号)

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