米6月雇用+28.7万人、10月以来の大幅増 賃金さえずFRBは慎重継続か 失業率4.9%、賃金は低い伸び率にとどまる
[ワシントン 8日 ロイター] - 米労働省が発表した6月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が28万7000人増加し、昨年10月以来の大幅増となった。製造業が全体を押し上げ、伸びは市場予想の17万5000人増を大きく上回った。一方、賃金の伸びは低いことから、米連邦準備理事会(FRB)は慎重な姿勢を崩さない可能性がある。
5月分は当初発表の3万8000人増から1万1000人増に下方修正された。今年前半の雇用者数の伸びは月平均で17万1500人。昨年10-12月期の28万2000人から鈍化しているが、エコノミストらは、2007-09年の景気後退(リセッション)から回復が進み、労働市場も完全雇用に近づいていることを踏まえ、妥当な動きとしている。
失業率4.9%と、0.2%ポイント上昇した。だがこれは労働人口の増加によるもので、雇用市場への信頼感を示唆している。市場予想は4.8%。
ただ賃金は前月比0.02ドル(0.1%)増にとどまり、鈍い伸びにとどまった。前年比の伸びは2.6%で、前月の2.5%から加速した。
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(バンカメ・メリル)のシニアエコノミスト、ミシェル・メイヤー氏は、賃金の伸びがなお抑制されていることについて、「労働市場に引き続き緩みが存在していることを反映している可能性がある」と指摘。「インフレ期待と生産性が低水準にあることで、企業の賃金を引き上げる意思、もしくは能力が制限されている可能性もある」と述べた。
ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティチュートのダレン・クロンク社長は、素晴らしい数字とした上で「5月、6月の振れの大きさをならすと16万2000人増、おそらく月間16万5000人増程度が実態に近いのではないか。これはトレンド並みで、労働市場への新規参加者を吸収して余りある水準だ」と述べた。
経済統計は消費や住宅関連中心に底堅い内容が続いており、4-6月期の成長率は1-3月期の年率1.1%から拡大が予想される。アトランタ地区連銀の経済予測モデル「GDPナウ」では現時点で4-6月期は2.4%成長を見込む。
ただ、前月行われた英国民投票で欧州連合(EU)離脱が決まったことから、米連邦準備理事会(FRB)はその影響を見極めるため、さらに多くのデータが出揃うのを待つ意向を示唆している。このため今回の統計が短期的な金利見通しに及ぼす影響はほとんどないとみられる。前出のクロンク氏は「米経済は底堅いことが裏付けられたが、FRBの軌道を変更することはない」とした上で年内の利上げ見送りを予想する。
TD証券(ニューヨーク)の副首席エコノミスト、ミラン・ムルレーン氏も、「今回の雇用統計でFRBは労働市場の基調的な状況をめぐりやや勇気付けられる可能性がある」としながらも、「英国のEU離脱決定の影響を見極めるため『様子見姿勢を取る』としている現在の政策スタンスを変える公算は小さい」としている。
前回の統計では、通信大手ベライゾン・コミュニケーションズの従業員3万5100人によるストライキの影響が下押し要因となっていたが、今回はそうした影響がはく落し、雇用の押し上げにつながった。
内訳では、製造業が1万4000人増加し、前月の1万6000人減から増加に転じた。小売は2万9900人増、レジャー・接客も5万9000人増加した。過去2カ月間落ち込んでいた建設は横ばいに持ち直した。
生産活動に従事し得る年齢の人口に占める働く意志を表明している人の割合、いわゆる労働参加率は0.1%ポイント上昇し62.7%だった。
現在は職を探していないが働く用意のある人(縁辺労働者)や正社員になりたいがパートタイム就業しかできない人を含む広義の失業率(U6)は9.6%で、前月の9.7%から改善した。
*以下の図表もご覧ください。
http://link.reuters.com/hyp84w
http://graphics.thomsonreuters.com/14/squareone/index.html
http://link.reuters.com/nyr52w
http://link.reuters.com/dex79v
http://link.reuters.com/das47s
http://link.reuters.com/rum98v
http://link.reuters.com/heh83t
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