「業務過多問題」を「長時間労働問題」にするな 「生産性が低いからもっと頑張れ」は無理筋だ

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「長時間労働をやめて家族との時間を大切にしよう」というメッセージは優しく聞こえる。反対する人は少なかろう。しかし「そのために脇目も振らず仕事し続けろ。早く帰ってもいいけど成果は落とすな」というのでは話が違う。

長時間労働是正は手段であって目的ではない

長時間労働の是正には総論私も賛成だ。しかしただ勤務時間が短くなればいいというものではない。それではマラソンのタイムをさらに縮めろと言われるようなものだ。労働者がさらにつらい状況に追い込まれるのだとしたら本末転倒。そんなことでは少子化だってむしろ加速しかねない。

重要なのは、長時間労働是正の是非ではなく、そのさまざまな副作用をどうやって抑えるかという議論である。それを抜きにして「きれいごと」を並べるだけでは不誠実だ。長時間労働是正は、男女が平等に心豊かに過ごす時間を増やすための手段の1つであって目的ではないことを忘れてはいけない。

共働き家庭が増え、「なぜ女性ばかり、仕事も家事も育児もしなければいけないのか」と最初に女性から声が上がった。そこでイクメン・カジメンに期待が集まった。しかし彼らにもそれ以上の負担を引き受ける余裕はなかった。

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そこで今度はイクボス(育児に理解のある上司)だ。中間管理職は「部下に残業させるな。育休を取らせろ。しかし成果は落とすな。人員補充もない」と無茶を押しつけられている。無論、中間管理職にも家庭がある。

夫・妻・中間管理職の3者で「ババ抜き」をしているだけなのだ。3者で「ババ」を押しつけあうのではなく、3者で申し合わせてさっさと「ババ」を閉め出さなければ、必ず誰かが敗者となる。

業務効率化はすでにある程度進んでいるのにそれでも長時間労働がなくならないとするならば、「ババ」すなわち残された根本的な問題は、労働者一人当たりの慢性的業務過多問題ではないだろうか。だとすれば、「業務過多問題」を「長時間労働問題」とすりかえるのは欺瞞である。

おおたとしまさ 教育ジャーナリスト

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Toshimasa Ota

「子どもが“パパ〜!”っていつでも抱きついてくれる期間なんてほんの数年。今、子どもと一緒にいられなかったら一生後悔する」と株式会社リクルートを脱サラ。育児・教育をテーマに執筆・講演活動を行う。著書は『名門校とは何か?』『ルポ 塾歴社会』など80冊以上。著書一覧はこちら

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