日産の北米戦略車、陰で泣いた部品メーカー

垂直立ち上げで勇み足

ところが、部品メーカー各社はこれに追いつかなかった。日産のオーダーに基づいて生産体制を整えてはいたものの、月産2万台級を含めて、作業の習熟度が低い新型車が「かつて経験したことがないほどの機種数」(大手部品メーカー)だったためだ。

ジャスト・イン・タイムを行う自動車生産では、各工程が安定的に流れている限り効率的だが、工程が狂い出すとその影響が各工程に一気に波及する。工程混乱の拡大を食い止めるため、部品会社は採算度外視の対応をせざるを得ず、残業での対応や緊急的な応援生産などが発生。これが各社の損益を直撃した。

異例の航空便を大量に使う事態に

ドア関連部材等を手掛けるあるメーカーでは、近隣工場から供給する予定だった部品を急遽、中国から航空便で取り寄せるなどして対応。自動車部品をコストが高い航空便で輸送することは通常ありえず、このメーカーではタイの大洪水の時で供給網が混乱したときすら1便使ったのみ。それを今回は10便以上飛ばすという異例の対応を取った。

また、日産では部材コストの削減を目指し、北米地域では、米国からメキシコへの調達先の変更を進めている。部品メーカーもそれに呼応し、米国からメキシコへ生産移管を急速に進めているところだ。生産と並行して行っているこうした移管作業で、部品生産の現場に緊急対応の余力が小さくなっていたことも影響した。

混乱について、各部品メーカーとも「準備不足」と反省の弁を述べる。複数の部品メーカーは「日産の示す生産台数計画は下振れすることがある。計画通りに準備すると未達のときに損を抱えるリスクがある」と語る。

こうした予実差はどの完成車メーカーであれありうる話だが、長い経験の中で部品メーカーは一定の相場観を形成している。とりわけ独立系の部品メーカーは完成車メーカーの支援を得られないため、リスクには敏感にならざるをえない。日産が部品メーカーに形成させていた“掛け目”が裏目に出たともいえる。

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