【渡邉美樹氏・講演】情熱と実行力のリーダーシップ(その1)
東洋経済主催セミナー「Leaders Conference 2008」より
講師:渡邉美樹
2008年2月12日 ロイヤルパークホテル(東京)
─ご存じ居食屋『和民』等を展開する外食事業をはじめ、介護、農業、環境事業やNPOの設立など、さまざまな分野で活躍する渡邉美樹氏。24歳にして経営者となった氏の考える「リーダーシップ」とは何か。ここでは、2月12日に行われた講演の模様をリアルにお届けしていく。氏が2001年に設立したNPO法人『スクール・エイド・ジャパン』の活動を追ったDVDの上映で幕を開けた本講演。最近ではカンボジアの孤児院「夢追う子どもたちの家」の設立に尽力し、多くの子どもたちの笑顔を集めた氏の原動力を、起業前の学生時代の話を交えながら語っていただくことにしよう。─
●一円残らず寄付するNPO団体
皆さん、はじめまして。カンボジアでの映像は「こんないいことをやっているんだぞ」というわけではなく、本日の講演料を1円残らずこの子どもたちに届けますというご報告と、感謝の意を込めて流させていただきました。私自身、この映像を見て感じるのですが、正直申し上げてNPOまでやろうとは思っていませんでした。
きっかけは、10年ほど前にある団体を応援させていただいたことです。団体の理事長と話をする機会があったのですが、そのとき彼は「最近不景気で寄付が集まらない」とおっしゃったんですね。それで私が「大変ですね、応援します」と答えたところ、今でも忘れませんが「だけど渡邉さん心配しないでください。私たちの運営費は7億円ですから」と言われたんです。最初はその意味が分からなかったのですが、寄付が減っても運営費は確保されていると言いたかったのでしょう。これがもし経営者だとしたら、利益を確保するために売上が減った分の経費を抑えるのは当たり前じゃないですか?私はその日に団体を辞めることにしました。
その後、いろいろなNPO団体を探していたところ、NPOには人がいい方が多いのですが経営が上手な人が少ないことに気付きました。例えば、1つのものを買うにしても、がんがんアイミツを取って1円でも安くする。これ当たり前ですよね。結果として何を言いたいのかというと、直接寄付にいくお金が非常に少ないんですよ。冗談じゃないと。下手な経営を助けるためにお金を出すわけではないと思い、NPOを作ってしまったんです。私のNPOの特徴は、1円残らず寄付すること。自分が一番嫌な思いをしましたから。どうしても必要な経費は指定寄付ということで、別のところから集めています。
少し前置きが少し長くなりましたが、今回のテーマである「情熱と実行力のリーダーシップ」とは一体何かというと、怒りだとか感動だとか、もしくはそこにおいての使命感。そういうものが無くて、リーダーシップは存在しないのではないかと思うんですね。ただ単純に、売上を伸ばそうぜということであれば、確かにそこそこのリーダーシップはできるでしょう。
でも、そんな売上を出して、売上のために人生を懸けられますか?私はできないな。利益のために人生なんて懸けられますか?高々カネじゃないですか。そんなカネのために人生を懸けられない。でも、ここに飢えて死のうとしている子どもたちがいる。命、懸けられるじゃないですか。何とかしなきゃいかんと思うじゃないですか。
(その2に続く、全7回)
1959年神奈川県に生まれる。1984年に有限会社渡美商事を設立し、経営が不振だった『つぼ八』の店舗を買い取る。24歳にしてフランチャイズ店オーナーとして起業する。1986年、株式会社ワタミ(現ワタミ株式会社)を設立。現在は外食、介護、農業、環境事業を展開するほか、NPO法人の設立や神奈川県教育委員会の委員を務めるなど、多彩な分野でその才を発揮している。
詳しくはhttp://www.watanabemiki.net
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