北海道新幹線、見えてきた地元・観光客の不満

青函間は従来比で乗換や時間増大、料金高に

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新幹線開業まで青森〜函館間を結んでいた特急「スーパー白鳥」。新幹線の乗車率は在来線時代の前年比で2倍になった(写真:ポパイ / PIXTA)

開業以降の14日間を平均すると、下りが1日当たり約2800人、上りが約2900人と帳尻が合わない。前年の同期間、津軽海峡線の特急・急行(中小国-木古内間)は上下とも1日約1300人が利用していた。

新幹線開業後は、往復とも新幹線を利用するのではなく、航空機やフェリー、さらには道南地区で並行在来線「道南いさりび鉄道」といった他の交通機関と組み合わせて新幹線を利用している乗客が増えている可能性がある。

今回の開業は、東京-新函館北斗間が最短4時間2分と乗車時間が長くなるため、整備新幹線の開業では前例のない、「片道は新幹線、片道は航空機」」という旅行商品が発売された。この種の商品は、過去の開業事例では、地元から提案されても実現しなかったケースがあった。制約の多い開業で、自由度の高い商品が発売されたのは、皮肉といえば皮肉な話だ。

前年と比べた乗車率をみると、開業日は329%と、北陸新幹線の開業時に匹敵する伸びを見せ、その後も200%前後の水準で推移している。東北新幹線・盛岡-八戸間の開業時は、在来線時代に比べて150%台を達成して「開業は成功」と評価されたことを考えれば、200%台の利用は、及第点といえるかもしれない。

ただ、盛岡-八戸間の輸送量は2014年度の実績で1日1km当たり1万5000人を超えている。新青森-新函館北斗間のデータと単純比較が可能かどうか、検証は必要だが、利用者数が1桁違うことを考えれば、北海道新幹線の経営上、必ずしも楽観できる数字ではないだろう。

グランクラスは高額でも健闘

注目されるのはグランクラスの利用率だ。飛行機のファーストクラスに匹敵し、新幹線では最上級のサービスを掲げるグランクラスは「できるだけ長く乗っていたくなる座席」と評価が高い。座席数が1編成当たり18席止まりとはいえ、開業日は乗車率80%、その後も30%前後を維持している。

グランクラス料金は乗車券と異なり、東北・北海道新幹線分が通算されない。乗り継ぎ割引の制度はあるものの、新青森駅を挟んで2区間分の料金を支払う必要がある。東京-新青森間のグランクラス料金は約3時間の乗車で9250円、新青森-新函館北斗間は1時間余りの乗車で6860円に設定されており、割高感は否めない。

北海道新幹線開業をはじめとする新幹線の話題は、4月25日発売の週刊東洋経済増刊『鉄道完全解明全真相2016』に詳しく掲載しています。画像をクリックすると、アマゾンの販売サイトにジャンプします。

全区間を通して乗った場合は乗車券・特急券とグランクラス料金を合わせて、片道3万円8280円かかる。それでも、予約状況をみると、週末には満席の便もあり「ゆっくり高価な旅をする」需要が一定程度、存在していることが分かる。

ただ、列車全体での乗車率は平均27%にとどまる。事前に予測された26%程度という数字にほぼ一致し、想定を超えた需要の開拓には至っていない。北陸新幹線・上越妙高-糸魚川間が開業2カ月の段階で47%の水準を維持し、グランクラスは66%だったことに比べると、利用が振るわないという印象も受ける。

とはいえ、今回の北海道新幹線開業は実質的に「東北新幹線の延伸」であり、開業区間も沿線人口も北陸新幹線沿線に比べると限定的だ。需要の大きい首都圏側と、需要の小さい青函エリアを1本の列車で結ぶ運用を前提とすれば、北海道新幹線区間の乗車率が低くならざるを得ない事情は、東洋経済オンラインの他掲載記事でも解説されている。いわば「日本列島の形」がもたらした、やむを得ない数字と言えるだろう。

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