高級化粧品「セルフ型」店の勝算 シャネルもランコムも自由に試せる

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 新たな取り組みの背景にあるのは、化粧品販売の主力チャネルである百貨店の衰退だ。百貨店の化粧品売上高は2008年、約3600億円に上ったが、11年には約3230億円に縮小。デフレに加えて、化粧品口コミサイトの浸透で各ブランドの比較が容易になったことや、多忙で店頭でのカウンセリングを疎ましく感じる女性が増えたことで、より手軽に化粧品を買えるネット通販などにシェアを奪われている。

「もっとお客様に近い店を作れば、(実店舗の)高級化粧品販売にもまだ伸びしろがある」(師岡伸生住商ドラッグストアーズ社長)との言葉通り、インクローバーでは現代の女性の志向により近い店作りにこだわった。一つは立地。働く女性が平日でも立ち寄りやすいように1号店は通勤時の利用が多い、川崎駅直結のラゾーナ川崎プラザに出店。また、カウンセリングを受けなくても、複数のブランドの商品を試して購入できるドラッグストアのような「セルフ型」の要素を取り入れた。

百貨店外での高級化粧品販売に乗り出したのは住商ドラッグが初めてではない。昨年11月には、イオンの「コスメーム」が越谷レイクタウンに1号店を出店。12年度中に大阪や名古屋など大都市圏への出店ももくろんでいる。住商ドラッグも今後、通勤客を見込める駅ビル中心に出店を進める計画だ。

■課題はスキンケア強化

ただ今後、高級化粧品のセルフ型店舗がビジネスとして成り立つには課題もある。先行するコスメームでは、収益性の高い化粧水や美容液などスキンケア品販売が伸び悩んでいる。そもそもスキンケア品は、自分で色試しができるメーク品と異なり、美容部員の説明を聞かなければ商品の違いがわかりにくく、セルフ型店舗になじみにくい。同店にもブランド研修を受けた美容部員がいるが、複数のブランドの商品に精通するのは難しいとの指摘もある。

 

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