ルネサス買収に浮上 官民日の丸連合の矛盾
トヨタが経産省を動かす
確かに、自動車メーカーなどが部品の安定調達に向けて、ルネサス再建に肩入れするというのは、理屈の通りそうな話ではある。しかし、今年4月ごろ、政府がルネサス支援を要請した際、トヨタは断っている。
それがここに来て風向きが変わったのは、「KKRに不安を募らせたトヨタが経済産業省を巻き込んだからだ。KKRによる買収を止めるために急きょ打ち出した生煮えの案で、何も決まっていない」(政府筋)。
KKRはルネサスの経営刷新、大株主や銀行には減資や債権放棄などの追加負担を求めているもよう。そのKKRがルネサスの経営権を握れば、大ナタを振るうことは間違いない。重要顧客である自動車向けの製品を捨てられるとは考えにくいが、価格やサポートを含む取引条件が一気に変わる可能性がある。加えて、将来的な海外への技術流出に対するおそれが、経産省を動かした。
ビッグネームが並ぶ官民挙げての日の丸連合なだけにメディアも大きく取り上げたが、実際の出資額など調整はこれから。「トヨタとそれ以外とではかなり温度差がある」(関係者)。最終的にまとまらないまま頓挫する可能性も低くない。
仮に連合が実現し、買収できたとしても、それが再生を目指すルネサスにとってプラスとは限らない。
ルネサスはNEC、日立製作所、三菱電機が赤字の半導体事業を切り離すために、3社の事業を統合して発足させた会社。本来なら、統合時に余剰人員・設備をばっさり切り捨てて立て直しを図るのがセオリーだが、寄り合い所帯のしがらみからリストラが遅れ、統合前の単純合算業績も含めると7期連続で最終赤字を続けている。