サイバー・テレ朝連合、「神アプリ」で動画勝負 藤田晋社長お得意の麻雀チャンネルも用意
主にスマホ向けのサービスだが、どういったユーザーを想定しているのか。藤田社長は「テレビをあまり見なくなった10~20代の若い層が中心になる。ツイッターやフェイスブックを開くように、惰性でアプリを開いて見てもらいたい。1日1000万人が見れば、ひとつのメディアとして育つと思っている」と語った。
サービスのきっかけはサイバー側からの提案だった。藤田社長は2013年4月からテレ朝の放送番組審議会の委員を務めている。テレビの総世帯視聴率(放送と同時に視聴している世帯の割合)が徐々に低下し、若い世代を中心に「テレビ離れ」が明らかになる中で、スマホ上でテレビ型の動画サービスを展開する構想を提案したのだった。
これに対し、テレ朝は「即座に賛同した」(早河洋会長)。社内に専門チームを設けるとともに、30名程度をAbemaTVに出向させて準備を進めてきた。現在、テレ朝の視聴率は日本テレビに次いでキー局2位の座を確保し、広告収入は比較的堅調に推移している。ただ、テレビ広告全体の伸びは鈍く、いまだリーマンショック以前の水準を回復できていない。
早河会長が「若い世代の視聴者獲得や、それに伴う広告ビジネスの獲得にもつながるという思いがあった」と言うように、新たな収益源の開拓は経営課題のひとつなのだ。
群雄割拠の動画市場、勝算はどこに?
サイバーにとってもAbemaTVはビッグプロジェクトだ。1年間で最大100億円程度の費用がかかる可能性がある。そのため、2016年9月期は営業減益となる計画を組んだ。下期(4~9月期)から50億円のコンテンツ獲得費用、20億円程度のマーケティング費用を見込んでいるほどだ。
現在、動画配信サービス市場は群雄割拠の状態だ。最大勢力と目されるNTTドコモのdTV(会員数500万)、ビデオパス(KDDI)、UULA(ソフトバンク)など携帯会社のサービス。テレビ各局も日テレ傘下のHulu日本版、フジテレビも自社のFODに加えて米ネットフリックスと協業する。さらには米アマゾンのプライム・ビデオ、ライブ配信ではLINEライブも始まっている。
それぞれ、コンセプトやコンテンツの提供方法が異なるとはいえ、これだけの競合がそろう中でユーザーを獲得するのは容易ではない。実際、ドコモのスマホ向け放送局「NOTTV」は会員数を伸ばせず、6月に撤退することが決まっている。他社を含めた魅力的なコンテンツの制作・調達はもちろん、アプリのデザインや使いやすさなど、多方面で投資を続ける必要があるだろう。
AbemaTVは24時間放送と豊富なコンテンツという強みを生かし、ユーザーの視聴習慣を作り出すことができるのか。ちょうど1年の準備期間を経て、サイバーとテレ朝の動画勝負が始まった。
(撮影:今祥雄)
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