FTの有料読者数、実は過去最大になっていた 新課金制度は何がスゴイのか?
だからこそ、ユーザーに読んでもらえそうな記事を選ぶことよりも、グーグル検索でFTの記事にたどり着いたユーザーに対し、1日3本まで記事を無償で読めるように開放した。
ちなみに、フェイスブックやツイッターなどを経由してFTの記事を読む場合は、1日1本までが無料となる。FTによると、このようなソーシャルプラットフォームからのトラフィックは、施策実施前よりも80%も上昇しているという。
ソーシャル流入が1年で2倍に
トラフィック解析サービスのシミラーウェブ(SimilarWeb)によると、2016年1月、デスクトップからのソーシャルメディアトラフィックは月間でおよそ32万7000件だったという。2015年3月と比べると、16万件もの上昇だ。
しかし、FTがこれで満足しているわけではない。スレイド氏によると、現在FTは分散型コンテンツのテストを3つの主力プラットフォームで行っているという。グーグルのモバイル高速化プロジェクト「AMP(Accelerated Mobile Page)」とアップルの「News」は現在使用しているが、フェイスブックのニュースプラットフォームである「インスタント記事」は、4月の上旬から使用をはじめる予定だ。「より多くのユーザーに我々のジャーナリズムを経験してもらい、知ってもらいたい。そして、FTのコンテンツに触れることを習慣にしてもらいたい」と、スレイド氏はコメントしている。
また現在、アップルの「News」から分析情報を待っている最中だという。この情報がないと、どれほどの成果があったのかがわからない。しかし、購読契約者の認証やオーディエンスの計測方法など、アップルとのあいだでいくつかの問題があるようだ。
グーグルの「AMP」は広告の提供ができるため、収益化の可能性をより強めてくれるが、フェイスブックの「インスタント記事」はオーディエンス開発ツールのようなものだと、スレイド氏は話す。現在、フェイスブックはいくつかのパブリッシャーに対し、「インスタント記事」内でニュースレター登録へのフォームを追加する実験を行っている。当然、FTもこれを試してみたいと考えているという。「フェイスブックがパブリッシャーの声をしっかりと聞いている証拠なので、これには勇気づけられる。もし有料の記事を載せられないのであれば、それはそれで構わない。このニュースレターの登録フォームは、我々にとっても最高のものだ」と語った。
2016年で創業128年目になるFTだが、経営コンサルティング企業、デロイト(Deloitte)によると、紙媒体とデジタルの両方において、有料発行部数がこれまでで最大に達したという。2015年と比べると8%上昇し、購読契約数は78万件になった。デジタル購読契約数も2015年と比べると12%上昇していて、56万6000件に達している。