ロッテ免税店、中国人の争奪に"韓流"で勝負 買い物すればチェ・ジウさんに会えるかも?
「当社の強みは、30数年蓄積してきた中国人観光客向けノウハウにある」。澤田社長は、自信たっぷりにこう語る。同社が保有する中国人500万人分の購買データを徹底的に分析し、「在庫回転率が非常に高く、本店では3000坪で年間2000億円売っている。さらに、懇意にしている中国の旅行代理店とのネットワークも強い。iPhone片手に価格を細かくチェックする中国人に満足していただけるよう、価格も敏感に見ている」(澤田氏)。
さらに、韓流スターも呼び水にする。中国では、韓流ブームが根強くあり、「韓流の現代ドラマは、若い世代を中心に支持されている」(中国ジャーナリストの中村正人氏)。定期的に開かれる同社のファミリーコンサートでは、人気男性アイドルなどが参加し、昨年は韓国のオリンピックスタジアムを埋める2万2000人を動員した。当然、コンサートにはロッテ免税店での買い物がセットとなっている。日本でも「冬のソナタ」で人気となったチェ・ジウのディナーパーティも開催しており、同様のイベントは「日本でも開催する予定」(ロッテ免税店のチャン・ソンウク代表取締役)。オープン当日には実際にチェ・ジウが姿を見せた。
先行した三越伊勢丹は苦戦中
オープン当日に行われたテープカット式には、徒歩10分圏内に同じく市中免税店(日本空港ビルデングなどとの合弁会社)を構える三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長も出席した。「競合として捉えるのではなく、相乗効果を狙っていきたい」と語ったが、心中は決して穏やかではなかったはずだ。1月末にオープンした三越銀座の免税店のすべりだしは、今のところ計画を下回っており、「購入した商品は、空港で手荷物として受け取るよりも、少し高くても良いからスーツケースに入れてしまいたいと、敢えて通常の売り場で購入するお客様が多い」(大西社長)と、運用上の制度がネックとなっていることを明かした。
一方、ロッテ免税店では消費税のみが免除される低価格帯の化粧品や菓子などの土産物は、その場で受け取ることが出来る点で優位となる。中国人向けビジネスでは数年の蓄積しかない日本勢にとって、ロッテが強力なライバルになることは間違いない。
ただ、満を持しての日本本格進出の先行きは、極めて不透明だ。2015年には流行語にもなった中国人の“爆買い”が、買い物額の減少というかたちで冷え込んでいるからだ。2015年1~3月のピーク時には1人あたり平均17万7000円あった中国人の買い物代は、中国人が多く訪れた「国慶節」のある10月を含む10~12月でも、同16万4600円まで落ち込んだ。百貨店協会が発表する免税売上動向を見ると、高級ブランド品などを含む一般物品の伸びが低調な一方で、安価な食品や化粧品が大きく伸張。高級品が武器となる空港型免税店のビジネス自体に逆風が吹くことになり、大丸・松坂屋を展開するJ. フロント リテイリングの山本良一社長は、今後の参入を否定している。
ロッテが描く「10年以内に1000億円」のシナリオが、順風満帆に進む確証も、ここに来てあやしくなってきた。
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