鉄道会社はいつから「ホテル屋」になったのか 今やどこの駅前も鉄道系のホテルだらけ
では、沿線外にはどのように展開していくのか。これも相鉄を例にとれば、「ホテルの施設数が1~2というレベルでは業界での注目度は高くないが、一定の施設数を超えてくると急激に情報が集まり出す」(相鉄)。ホテル事業に積極的だと業界に知れ渡ると、ホテルに適した土地の売却情報や居抜き案件、あるいは既存のホテルを運営してみないかといった商談が次々と寄せられるのだ。
特に、鉄道会社の知名度は地方で有効な武器となる。「相鉄という名前が知られていなくても、鉄道会社というだけで信用度が増す」(同)。売り主には、鉄道会社は堅実な経営をしているという安心感があるのだろう。資金の貸し手である金融機関にしても、多くの資産を持つ鉄道会社であれば融資はしやすい。
オフィス投資を進める会社も
訪日需要を背景にホテルの開業を加速する鉄道会社がある一方、こうした動きと距離を置く企業もある。
東急は近年、ホテルの新規展開を渋谷や二子玉川など自社の再開発案件に限定し、電力小売りなど沿線価値の向上に力を注ぐ。近鉄グループHDも、ホテルの新規開業には慎重だ。「ホテル事業は足元こそ絶好調だが、長期的には浮き沈みがある」(近鉄)。
多角化戦略としては、最近ではホテルだけでなく、不動産事業への投資を強化する会社も増えている。不動産といっても、かつてのようなマンション分譲ではなく、オフィスビル投資だ。
市況変動の影響が大きいマンション分譲と違い、オフィスビルは安定した賃料収入が得られる。近鉄は今年1月、東京・京橋にオフィスビルを取得した。「これからの時代は、ポートフォリオを分散化し、収益を安定させることが必要」(同社)。今後も首都圏でのオフィスビル投資を増やしていくという。
目下、鉄道とホテルが屋台骨となっている西武HDは、第3の柱として不動産に大きな期待を寄せる。同社は、2027年に開業するリニア中央新幹線の発着駅となる品川駅前に、広大な土地を所有している。現在は3つのプリンスホテルが稼働しており、少なくとも東京オリンピックが開催される2020年度までは営業を続ける方針だ。
しかしその後は、JR東日本や京浜急行が行う品川再開発と歩調を合わせて、オフィスを含めた複合ビルに建て替える可能性が高い。その面積は13万平方メートル。JR東日本が進めている品川―田町間の再開発計画とほぼ同じ面積だ。
芝公園のそばにも2つのプリンスホテルがあり、その面積は約8万平方メートル。こちらも再開発計画が取り沙汰されている。これらがすべて完成すると、東京・城南エリアでは大手不動産会社と肩を並べる存在になるかもしれない。
人口減少が深刻な問題となる中、多角化事業の実力が問われる時代になってきた。その動向は本業の鉄道以上に目が離せない。
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