『いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ』を書いた吉川洋氏に聞く--二人の唱える経済学は水と油ではありません《09年上期ベスト経済書1位》


 仮に日本経済が電気洗濯機しかつくれない経済だとします。すると、1台洗濯機を買えば、当分の間2台目は必要ないので、需要が不足してゼロ成長になってしまいます。それを打ち破るのは、新しい物やマーケットを生み出すイノベーションです。イノベーションこそが、中長期的な需要を生み出すという点で、ケインズとシュンペーターの経済学がつながるわけです。

その意味で、イノベーションを滞らせる要素を取り除くことが構造改革と定義すれば、小泉首相が掲げた「構造改革なくして成長なし」というフレーズは正しかったと思います。私自身、小泉内閣下の経済財政諮問会議のメンバーの一人で、当時は「吉川はケインズ派からシュンペーター派に鞍替えした」と非難されましたが、構造改革支持はケインズ経済学と矛盾するものではありません。

--今日、ケインズと言えば、「不況時には、穴を掘って埋め戻せばいい」という言葉が先行しがちです。

彼の『一般理論』をよく読むと、「穴を掘る」という例え話は金という限界効用が低減しない特殊な商品を掘り出す話の前座で出てきます。文字どおり「不況なら穴を掘って埋めればいい」と彼が主張しているわけではない。むしろ彼は「賢い投資」の必要性を説いています。

--シュンペーターとケインズでは、不況のとらえ方が違います。

私の考え方はケインズに近い。やっぱりシュンペーターは相当なハードライナーですよ。彼は、資本主義に格差はつきものだ、不況でジタバタするなという立場です。ただ、シュンペーターは不況と恐慌を峻別していて、恐慌時には、資本主義の崩壊を防ぐために、ある程度の財政政策に理解を示しています。

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