【産業天気図・石油・石炭製品】石油製品需要低迷に伴う採算悪化が響いて「曇り」が続く。一段の需要減なら「雨模様」に

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予想天気
  09年10月~10年3月    10年4月~9月

2009年度後半の石油業界は「曇り」の天気が続きそうだ。石油製品の国内需要低迷で採算が悪化しており、需要減に歯止めがかからなければ「雨模様」に変わるシナリオも否定できない。

石油元売り各社は在庫評価に総平均法を採用。期初の在庫額と期中の仕入額を足し合わせて平均する方法だ。原油価格の上昇時には期初の割安な在庫が含まれるため売り上げ原価を押し下げ、評価益が発生する。だが、足元の収益環境を見ると、石油製品の精製・販売事業の“誤算”で在庫評価影響を除いた「真水」ベースの利益の下振れ圧力が強く、油価の値上がりに伴う評価益の押し上げ効果を打ち消してしまっている。

元売り最大手の新日本石油<5001>は今10年3月期の経常利益予想を4月公表時の1800億円から1700億円へ引き下げた(「東洋経済オンライン」予想は1750億円)。「真水」ベースでは850億円を600億円へ下方修正。つまり、在庫影響による押し上げ効果は逆に950億円から1100億円へ上振れした計算だ。

4月公表時の見通しでは原油価格の前提を中東ドバイ原油1バレル54.4ドルに置いた。だが、修正計画では同62.5ドルへと見直し。足元の原油高で在庫評価のプラス影響は拡大するが、実質ベースでは厳しい収益環境を考慮し、業績予想の減額に踏み切った。

実質経常益下振れの主因は石油精製・販売事業の伸び悩み。軽油、灯油、A重油の「中間3品」中心に、原油調達コストと石油製品の卸値のマージンが当初の想定を下回っており、同製品部門の経常益予想を270億円から110億円へ引き下げた。

新日鉱ホールディングス<5016>も傘下のジャパンエナジーが手掛ける石油事業の09年9月中間期実質経常益予想を180億円の黒字から収支トントンへと大幅に下方修正(10年3月期通期見通しは中間決算を受けて見直しの予定)。石油精製・販売事業が「真水」ベースで105億円の黒字から90億円の赤字へと水面下に沈むのが響く。
 
 同事業の実質経常益を四半期ごとに見ると、08年10~12月期には392億円の黒字を記録。だが、09年1~3月期は48億円の黒字にとどまり、同年4~6月期には93億円の赤字へ転落という推移をたどっている。石油製品のマージンの悪化に足を引っ張られた側面が大きい。

各社は7月以降も製品の減産に取り組んでおり今後、採算の悪化には歯止めがかかる可能性もある。それでも、世界景気の先行きをめぐっては浮揚策の打ち切りによる息切れも懸念されており、石油需要が急速に上向くとは考えにくい。このため、10年度前半も「曇り空」が続くと読む。

(松崎 泰弘)

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