<商品の価値構造と価格構造を分解して考えてみる>
この商品がもたらす価値と、その価値がどのように価格に反映されているのかをフレームワークで考えてみたい。フィリップ・コトラーの「製品特性3層モデル」を用いる。その商品を手に入れることで実現したい「中核価値」は、飲料であるので「喉の渇きを癒す」である。これは単なるミネラルウォーターでも実現できるので、100円分の価値と考えよう。
その中核価値をどのように実現できるのかという価値を「実体価値」という。5種類のフレーバーで、不足しがちなビタミンやミネラルなどの栄養素が手軽に摂取できること。さらに保存料・合成甘味料・合成着色料を一切使わず、水も純水使用でカラダに安心して摂取できるということ。つまり、味と機能性と安心感が「実体価値」であり、それは一般の清涼飲料と同じく50円分に相当すると考えられる。合計150円だ。
200円という価格のあと50円分を占めるのが「付随機能」である。付随機能は、それがなくとも「中核価値」に影響は及ぼさないが、存在することでより魅力を高める要素である。
NYのセレブが愛飲していて、カンヌ国際映画祭で併催されたイベントではパリス・ヒルトンやマライア・キャリーが登場したという。「セレブ御用達」というキーワードに弱い日本人好みの要素がまず挙げられる。
商品のパッケージもいかにも洋モノ。オシャレな雰囲気を漂わせている。ちょっとしたユーモアも隠されており、5つのフレーバー各々をテーマにした、ショートストーリーが記載されている。
都内各地で繰り広げられたサンプリングやイベントで話題になり、参加したりサンプルを手にしたりした人が、ブログやSNSで書き綴ってさらに話題を盛り上げる。その「流行に乗っている感」も重要だ。つまり、この商品の「付随機能」と50円分のプレミアムは「気分」に由来するところが大きいのがわかる。
さて、この商品、「日本にどの程度普及していくのだろうか」というのが最初の問いであった。「ティッピング・ポイント」という言葉がある。ある商品やアイデア、流行が、一気に社会に広がる劇的瞬間のことを指す。最近また流行り出しているインフルエンザの感染を考えてもらうとイメージがしやすいかもしれない。ある閾値を超えると、野火のように現象が一気に広がっていくのだ。グラソービタミンウォーターはどのようにティッピング・ポイントを迎えるのか。それとも限られた範囲の流行で終わるのか--。
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