ここにきて自民党を圧倒する民主党の「人材力」

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ここにきて自民党を圧倒する民主党の「人材力」

塩田潮

 メディアの総選挙情勢調査で「民主党勝利」の報道が多くなった。
 政権選択の総選挙といわれるが、勝った党の党首は次の首相だから、各党の「党首力」も選挙を左右する大きな要素となる。世論調査の「どちらが首相にふさわしいか」の項でも鳩山代表が麻生首相を圧倒している(18日発表の共同通信の調査で「麻生19.5%、鳩山48.6%」)。
 だが、民主党優位の情勢が鳩山代表の党首力によるものと受け止める国民は多くなさそうだ。人の側面でいうと、党首力よりも政党としての総合的な人材力で自民党を凌駕していると見る。

 そう説くと、「人材力なら自民党が上。政権運営の経験も豊富で、実務能力も高く、役に立つ人材が多い」という反論が聞こえてくる。反対に、民主党には「未経験、未知数、未熟。主張に行動や責任が伴わず、人材面では見劣りする」という厳しい採点も多い。
 なのに、人材力は民主党が上と見るのは、既存政治家の政界進出時の覚悟と以後の境遇に差があるという点に着目するからだ。自民党は結党以来54年、総選挙の時点で野党だったことは一度もない。つまり今の自民党議員は全員、与党を前提に選挙に出て政治家となった人ばかりである。
 一方、民主党議員は、野党を承知で自民党を離れた人、最初から野党にいて合流した人、野党の民主党を自ら選んで政界に身を投じた人の集団だ。

 出発から与党で権力のうまみを味わってきた政治家と、あえて野党を選び、いずれ政権交代をという志と精神を持ち続けてきた政治家の差は大きい。もちろん政治家に必要な資質や条件は「持続する魂」だけではないが、長期の野党生活という不遇に耐え、逆境を乗り越えるパワーが、ここへきて自民党との人材力の差となっている。もし野党転落した場合、自民党はどんなリーダーを擁すれば再生と復活が可能なのか。ポイントは数多いが、不遇に耐え、逆境を乗り越える志と精神の持ち主という点は第一の条件であろう。
(写真:今井康一)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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