トヨタ拡大路線の「優等生」 フタバはなぜ暴走したか

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トヨタ拡大路線の「優等生」 フタバはなぜ暴走したか

「事態がこういうレベルに達しているとは気づいていなかった」。去る3月10日、名古屋証券取引所での記者会見。フタバ産業の小塚逸夫社長(当時)は頭を下げ、自身の3月末における辞任を表明した。2008年10月に発覚した「過年度決算の訂正問題」で、社内外の調査査員会が提出した報告書から、過去の「不適切な会計処理」が明らかとなり、それを受けての引責辞任であった。直近の決算まで訂正した結果、06年3月期から4期連続の最終赤字も初めて公となった。

フタバは愛知県岡崎市に本社を構え、自動車用のマフラーなどを生産する部品会社(サプライヤー)だ。売上高の7割をトヨタ自動車グループ向けが占め、トヨタ系のサプライヤーでも「優等生」と目されていた。しかしその優良会社には、二つの不祥事が隠されていたのである。

粉飾決算疑惑と関連会社への不正融資

フタバが初めて過年度決算を訂正したのは、08年10月15日のことだ。2006年3月期からの3期分だったが、それから2カ月も経たない12月10日には、2度目の訂正を行う。期間は5期分にも及び、減額の数字も膨らんだ。

訂正で焦点となったのが、04年末から導入した混流生産の設備だ。生産ラインの“試し運転”に充てていた、材料や検査にかかる費用などを10年償却してきたが、これを単年度ごとに期間処理するよう監査法人から指摘された。こうした費用は、試験に使ったと確実に証明できないかぎり、一括計上する必要がある。が、フタバは伝票などの証明がないまま10年間に小分けし、実態より少なく見せていたという。

この不適切な会計処理に加え、固定資産の減損や繰延税金資産の取り崩しも重なり、過去5年で合計1148億円もの純利益を減額。06年3月期から08年3月期までを赤字決算へと訂正した。12月25日に延期した異例の08年9月期中間決算発表では、09年3月期予想も含め結局、4期連続の最終赤字に修正。決算短信には破綻リスクを示す「継続企業の前提に疑義」の注記が付き、東京証券取引所からは現在でも特設注意市場銘柄に指定されている。

昨年12月の決算訂正時には進退を明言しなかった小塚氏も、調査委員会が報告書を提出したのを区切りとして、3月31日付でついに社長を辞任せざるをえなくなった。


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