トヨタ拡大路線の「優等生」 フタバはなぜ暴走したか
だが事はそれだけで終わらない。小塚氏辞任後、さらなる激震がフタバを襲う。「ビジネスデザイン研究所(BDL)」への不正融資疑惑だ。
「ゆがんだ忠誠心」。この不正融資問題を調査した社外の特別調査委員会は、フタバでトップを務めた小塚氏に対する同社の企業体質を、こう厳しく断じた。
BDLは1990年に設立され、ロボットを開発・生産するベンチャー企業。フタバはロボット事業に進出するため、03年に資本参加し、出資比率15・87%の持ち分法適用会社としている。主に、会話可能なロボット「イフボット」などをBDLが開発し、フタバが生産を担当してきた。05年の愛知万博にも出展し、一時は話題を集めた。
このBDLに対して、フタバは子会社の「フタバ伊万里」と「雙葉科技」を通じた架空取引などで総額64億円もの不正な金融支援を行っていた。うち17億円がいまだ返済されていない。その内容は、フタバの取締役会を経ずに、開発費といった名目で直接支出した額が18億円。ほかに、フタバの預金を担保にBDLに信用供与した額で33億円、などだ。
この事業の熱心な旗振り役が、当時社長の小塚氏だったという。不正融資を実行したのは役員だが、出資の契機となったのが小塚氏による紹介であり、社内ではBDLが「小塚案件」と認識されていた。BDLの財務内容が悪化してからも、悪い報告を小塚氏に上げずに、倒産だけは防ごうと隠蔽工作が行われた。
「BDLに関して失敗は許されず、悪い報告を行うことすらできないという意識を強く持っており」「社長案件を潰してはならない、社長が推進しているロボット事業のためであれば、多少のルール違反もいとわない、ゆがんだ忠誠心がその根底にある」(特別調査委の報告書より)。
結果的に経理担当の加藤博久前執行役員は懲戒解雇。すでに非常勤相談役に降格していた小塚氏を含め、3人の役員は自主的な辞任となった。弁護士5人で新たに発足させた責任追及委員会は、役員への損害賠償請求なども検討しているという。BDLの一件で、12月の9月期中間決算に続き09年3月期の本決算もまた、発表が延期された。
この不正融資問題では、BDL側の木村憲次社長が関与否認の反論会見を開くなど、その後も情勢が混沌としている。筆頭株主のトヨタは事態収拾を図ろうと、1月に自社の元経理部長ら2人をフタバに送り込んだほか、タイトヨタの上級副社長だった三島康博氏を派遣。6月末から三島氏がフタバの新社長に就任した。