日本経済、カンフル剤効果が切れ「逆J」字型の尻すぼみに
先送りされてきた「ペントアップ需要」が後押しした輸出。国内のある液晶材料メーカーの担当者は「3~4月に需要は底打ちし、7月まで持続しそうな勢い」と話す。
特に、中国向け輸出の復元力は強い。08年11月から3カ月連続で前月比2ケタの落ち込みとなったが、09年2月からは回復傾向が続く。
他国に先駆けて実施した4兆元規模の景気刺激策が内需拡大に貢献。日本からの化学製品や電子部品などの輸出を吸収した。経済協力開発機構(OECD)は6月、中国の09年経済成長率予測を3月発表時点の前期比6・3%増から7・7%へと引き上げた。安定雇用確保に必要とされる8%成長も視野に入る。
5月には家電の買い替えに補助金を支給する「以旧換新」政策を新たに導入。需要創出に一段と力を入れる。主要国間では、「ラストリゾート」としての中国に対する期待がさらに高まりそうだ。
足元の生産回復は反動増の側面も大きい。各企業は減産に取り組み、需要減少を上回るピッチで在庫を圧縮。調整一巡で、現在の需要に見合う水準まで生産を引き上げてきた。
ただ、ピークから4割落ち込んだ生産は「09年末までに2割減の水準まで戻るが、その後はほとんど回復しないだろう」(クレディ・スイス証券の白川氏)。というのも、「対中輸出の下支えだけでは力不足」(三菱UFJリサーチ&コンサルティングの五十嵐敬喜調査部長)。主要国の最終需要の伸びは鈍い。
中国頼みにも限界あり 生産8割回復が精いっぱい
米英両国での住宅バブル、資源価格高騰で懐の潤った中東諸国やロシアなどの購買力急増、そして円安の進行……。こうした複数の要因が日本の輸出を膨らませ、07年後半までの景気拡大をもたらした。
対中輸出の伸びは、中国が日本から輸入した中間財の加工・組み立てを施し、欧米へ輸出するという三角貿易によって支えられてきた面もある。だが、米国は今や過剰消費のツケに苦しむ。欧州情勢も極めて不安定。一部の投資家は金融機関の資産内容に疑念を抱く。同志社大学大学院の浜矩子教授は「怖くて中身を徹底的に洗い出せないのではないか」と指摘する。これでは日本の生産がピークを奪回するのに長い年月が必要なのもうなずける。