主要私大13校最新決算、大学の資産運用が転機に、評価損計上が続出!
関東、関西の主要私立13大学を経営する学校法人の2008年度決算が出そろった(以下、法人名でなく大学名で表記。次ページに一覧表)。金融市場混乱の影響が注目される有価証券の運用に関しては、簿価に対して一定価格以上下落した有価証券について、損益計算書上の評価損計上を迫られた。その金額は、慶應大の約170億円を筆頭に、上智大(評価損中心に90億円)や青山学院大(評価損中心に56億円)の順に損失計上額が大きかった。
また、損益計算書上の損失計上がなくても、バランスシートに含み損を抱える大学も続出。09年3月末時点の有価証券の含み損は、慶應大の365億円が最大で、次いで中央大(同51億円)、関西学院大(同29億円)など。いずれも08年3月末と比べ、含み損が拡大した。
リスク性資産多い慶應大や上智大
なぜ、これほど巨額の損失が相次いだのか。各大学への聞き取りなどで調べたところ、多くの大学で仕組み債を中心とした多様な有価証券を保有していることが判明した(中央大のみ内容非開示)。為替や株式のリスクを取り、デリバティブが組み込まれた仕組み債の保有が多い大学ほど、損失が大きい傾向がうかがえた。
含み損がいちばん大きかった慶應大は、運用資産1135億円のうち、「伝統資産」と言われる国内上場株式や国内外の債券のほか、ヘッジファンドやREIT、ベンチャーキャピタルなど、「オルタナティブ」と呼ばれる資産を約4分の1保有。同大の清水雅彦・常任理事(財務担当)は「ある程度の運用のリスクを取らないと、資産運用収入を財源としたさまざまな事業ができなくなる。今後はリスク総額をミニマイズできるような、より詳細な運用ルールづくりをしていく」と説明する。
早稲田大は、運用する有価証券616億円を、国内外の債券を中心に投資。不動産SPC(特別目的会社)への出資金約72億円のほか、為替系の仕組み債も219億円保有する。「資産運用によって過去5年間で123億円の収益を生み、奨学金や研究の助成、海外交流などに充てられてきた」(同大財務部)と、今後も同様の運用を続けていく方針だ。
一方、上智大は運用資産約480億円のうち、ドルやユーロ建ての外債が5割強、国内の株式が4割強と、為替や株式のリスクを取った運用スタンスをとっている。「過去8年間の平均運用利回りは年利4・2%で、12・5%の年もあった」(大日方 剛・財務局長)という。同大は08年7月からリスク管理強化の検討を始めていた矢先だったが、間に合わなかった。
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