「駅員への暴力」が増えている原因は何なのか 加害者の2割は酔っ払いではなかった!
この民鉄協のデータには発生場所や発生時間帯、飲酒の有無も載っていて、やはり一番多いのは発生時間だと深夜帯、飲酒の有無では飲酒ありのケースだ。
具体的な事例として上がっているものには、「酩酊状態で電車内で喫煙をしている乗客に、車掌が喫煙を控えるよう声をかけたら、突然胸を数回殴打され、さらに両手で強く胸を押され、壁に胸と背中と後頭部をぶつけて負傷した」といったものや、「小競り合いをしていたうちの一方が相手方を殴り、唇上部に頭突きをしたので、駅務室に移動して警察官を待っている間に、駅員のスネをけ飛ばし、左胸を殴打した」といったものがある。
だが、深夜帯で飲酒ありばかりかというとそうではない。時間帯では2割が9時から17時、つまりラッシュアワーではない昼日中の時間帯に発生している。さらに、しらふで暴力をふるう人が2割もいるのは驚きだ。年齢層はまちまちで、20代から60代以上まで全ての年代に分散している。発生場所で多いのはなぜか改札付近で全体の40%。次がホームで36%。
首都圏の鉄道会社に勤務する筆者の知人によれば、暴力行為に及ぶ人は「基本的にスーツ姿のサラリーマン風の男性」なのだそうだ。我が国はまがりなりにも先進国である。つまり、先進国のホワイトカラーの男性が加害者なのだ。
ちなみに、さすがに女性では「暴言を吐く人はいても、暴力行為に及ぶ人は見たことがない」という。
なぜ改札付近が多い?
改札付近が多いのは、「最近はホームドアの設置が進み、ホームに配置される係員の人数が減っており、係員が必ず居る場所が改札付近だから」だそうだ。
それでは改札付近で、係員はどんな状況で暴力行為を受けるのか。「比較的多いのはきっぷの買い間違いによるトラブル」だという。複数の路線が乗り入れしているターミナル駅では、きっぷの買い方が複雑になった分、買い間違えて乗り換えの際に自動改札にきっぷを吸い取られてしまうケースが増えた。
そこでいきなりキレて係員に食ってかかるわけだが、中には「俺のせいだって言うのか!」などと言って怒り出す人もいるらしい。その一方で、券売機に誘導する際、「静かに係員の説明を聞いていた人が、突然背後から暴力をふるってくることもある」という。
民鉄協が開示した事例の中にも、「自動改札機にきっぷを入れたが入場できなかったため、駅員が確認したところ、きっぷが折れていたことが原因だったので、その旨説明したが、電車に乗れなかったことに腹を立てて駅員の頬を叩いた」というのがある。
鉄道会社では社員に身を護るための教育も一定程度行っているところもある様で、「泥酔して寝込んでいる乗客を起こす時は、蹴飛ばされたり殴られたりしない様、正面には回らず、横から起こす」「声をかけるときは、相手が驚かないよう、最初は小さい声で、徐々に音量を上げていく」「一人では手に負えないと思ったらすぐに別の職員も呼んで複数で対応する」「身の危険を感じたら110番する」というのが基本だそうだ。
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