製造業(メーカー)における生産・研究設備の新・増設に限らず、流通業の店舗開発など、企業の成長エンジンとなるのが設備投資。賃上げとともに安倍政権が大手を中心として企業に促している。
このうち改めて設備投資とは、建物や機械設備などの有形固定資産に資金を投じることで、企業が行う民間投資と国や地方公共団体が主体となる公共投資がある。設備投資をしなければ事業を拡大できない業種・業態も多く、設備投資額が大きい会社は、それだけ社会に与える影響が大きいということにもなる。
東洋経済オンラインは上場企業の直近本決算における設備投資額を調べ、トップ500社をランキングにした「初公開!『設備投資額が大きい』トップ500社」を2月1日に配信したが、直近の1年だけを切り取っただけでは、本当の姿は見えてこない。今度は過去10年における設備投資累計額の大きい上位500社をランキングした。
小社刊の『会社四季報』(2016年新春号が発売中)で集計したデータのほか、各社の財務諸表から現預金、有利子負債、利益剰余金も併載した。どんな会社が積極的に設備投資をしているのか、財務状況などと併せてご覧いただけるはずだ。財務状況のほか、企業が生み出した利益を積み立て、会社内部に蓄積されている利益剰余金との関係に着目するのも興味深い。
1位NTTの過去10年累計額は20兆円超
直近の設備投資額が大きい会社のランキングと似通った部分はあるものの、累計で見ていくと上位の顔ぶれは変動する。1位は日本電信電話(NTT)で20兆1867億円。言わずと知れた国内通信のガリバーで、子会社で携帯電話首位のNTTドコモ(3位・7兆5182億円)も含み、圧倒的な規模だ。
2位には世界一の自動車メーカーであるトヨタ自動車が10兆7529億円で続いた。4位は東京電力(6兆4632億円)、5位ソフトバンクグループ(5兆6367億円)などが続く。
過去10年の累計で1兆円以上の設備投資を積み上げたのは61社。積極的な設備投資は企業を成長させるエンジンとなる一方、経営再建中のシャープ(33位・1兆7804億円)など、需要を読み違えた巨額の投資によって、逆に経営が苦しくなるケースもある。
このランキングも「初公開!『設備投資額が大きい』トップ500社」と同じく、通信会社や電力会社、世界中に巨大な工場を構える製造業や店舗をたくさん持っている流通系企業など、いわゆる大手の「オールドカンパニー」が上位に並んでおり、こうした企業が長年にわたって日本経済に大きく影響を与えていることが伺える。