ヤマダが図る脱同族、「息子はその任にない」 新社長に選ばれた桑野光正常務の課題とは?

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ところが山田社長は、傑氏の社長就任は、今回はもちろん、将来的にもないことを、1月21日の社長交代会見で断言したのである。

「息子は広告プロモーション本部長として、責任を持ってやっている。それなりの人材であれば、登用することがあってもいいと思う」とした一方、「人はそれぞれに資質がある。私の息子については将来的にも、代表者として、後継者として、その任にないかなと思っている」と語った。社長交代会見で、自身の子息が継ぐことはないと言及するのは、極めてまれだ。

背景には将来見通しの厳しさがある。ヤマダ電機は2009年5月から2011年3月まで実施された家電エコポイント制度と2011年の地デジ移行を追い風に、業績を大幅に伸ばした。だが、2011年3月期をピークに、売上高、営業利益ともに急減している。

次期社長は実力を発揮できるのか?

今後は少子高齢化によって、家電市場はさらに縮小するとみられている。家電販売の見通しが厳しい中、同族経営を続けるのは無理があると、山田社長は長期的な視点で判断したのだろう。

実際、2008年にはおいの一宮忠男氏(現副社長)を社長に据えたが、2013年3月期に2期連続で減収減益になったことを受けて、社長以下の取締役を1段階ずつ降格する異例の人事を実施。2013年6月に山田社長がトップに返り咲いたという経緯がある。同族経営で乗り切れるほど甘い時代ではないと、当時、山田社長は痛感したに違いない。

新社長に課せられた既存ビジネスは、家電業界の厳しい環境を考えると、現状維持すら難しい。しかも桑野氏の上には、副会長に就任する一宮前社長と、会長となる山田現社長がいる。桑野氏がこの両者に気兼ねせず、実力を発揮できるように、配慮することも求められる。

脱同族経営へ舵を切ったヤマダ電機。業績を上向かせ、新体制を軌道に乗せることは、容易でなさそうだ。

「週刊東洋経済」2016年2月6日号<1日発売>「核心リポート04」を転載)

富田 頌子 東洋経済 記者

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とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

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