もともと加ト吉は、工場生産の端数をミートホープに転売していたが、その利益を帳簿に加算せず工場長が懐に入れていた。端数とは発表されたものの、元従業員は大量に購入していたと語っていた。
この加ト吉以外にもさまざまな食品転売ブローカーがかかわっており、全貌は明らかになっていない。なお、当時の新聞報道から引けば「全国から集まったクズ商品のたまり場になっていた」と元社員は語っている(読売新聞2007年6月25日・東京朝刊版)。ミートホープは食品偽装も行ったと述べたが、有名なところでは、JTは子会社がミートホープと取引をしていたため回収におわれた。
食品偽装であれ不正転売であれ、取引先各社とも無策だったわけではない。契約内容は厳格に取り交わし、かつ工場監査も行っている。さらに検査内容なども確認していた。しかし、いったん流れ始めてしまえば、恒常的な検査実施は難しく、不正をとめられなかった。
基準値を超す農薬が検出されたコメが流通
【三大食品不正転売事件】②三笠フーズ
中国などから輸入したコメのうち、基準値を超す農薬等が検出されたコメを、そのまま転売していることが判明した。利益確保が目的だった。業者は1977年に設立された三笠フーズ(大阪府)。事件の発覚前には、年間で18億円ほどの売上高を誇った。同社は、本来ならば工業用の糊(のり)などにのみ転用するはずのものを、米菓、焼酎などの生産業者に売りつけた。
具体的には輸入検査の段階で、殺虫剤(メタミドホス)やカビ毒(アフラトキシン)が相当量干出されたコメが入札を経て落札される。三笠フーズは、2003年から2008年までに政府から買い受けた約1800トンのコメから一部、不正転売を行った。正確な数は把握できないが、メタミドホスに汚染された中国米を100トン、ベトナム米を876トンほど転売したとみられる。
「健康被害の可能性は低いのではないか」とされたが、そのコメの転売を受けて“しまった”業者からは不安の声が上がった。農林水産省は400にわたる取引先を公表することになった。消費者はそれら取引先からの購入を敬遠した。農林水産省は、取引先への補償制度を設立したが、有形無形さまざまな被害が関係社に降り注いだ。
本来は加工工程について農林水産省の担当者が立ち会うことになっている。ただし、担当者ではその不正を見抜けなかった。同社の場合は、一部の業者から、不正転売の情報が農林水産省に上がり、そこから立入検査を経て発覚した格好だ。
これも同省の職員を責めるのはたやすい。ただ、現実的には、すべての加工を眺めるわけにもいかない。牛一頭まるまるであればトレーサビリティ管理が可能だ。しかし、コメの一粒一粒にトレーサビリティ管理は難しい。ただ、できるかぎりは努めようと、同省は事件後、原産国表示と流通経路の明確化を制度化した。さらにコメの入札資格を厳格化した。
【三大食品不正転売事件】③ダイコー
そして昨今、巷間を騒がせているのが、CoCo壱番屋のビーフカツを不正に転売したとされるダイコーだ。いまのところ、みのりフーズを経由して、ニチレイフーズ、マルコメ、イオンなどの食品も横流ししていたことが判明している。みのりフーズの倉庫にはセブン-イレブンのプライベートブランド食品もあった。当事件に関してはさまざまなメディアが報じたので、これ以上の説明は不要だろう。
この廃棄食品の転売については、マニフェストと呼ばれる廃棄管理票は問題なく記載されていた。企業の担当者も、廃棄現場を確認している。性善説で業務を回しているはずが、自社商品が転売されていった。すべての廃棄に同席したり、あるいは、自社で廃棄処分したりするのは現実的ではない。
ただ、とはいえ、ケンタッキー・フライド・チキンはこうした廃棄処理に同席するというし、CoCo壱番屋も、生ごみと混ぜて廃棄すると決めた。ローソンも定期的に廃棄現場を確認していくという。抜き打ち検査を行うとする企業もある。いずれにせよこれはコストアップだ。安全な食を担保するためのコストと各社とも考えた結果なのかもしれない。
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